だが、無条件というわけではない。この施策の恩恵を受ける条件として、レストランはマーケティング手数料の3%アップに同意しなければならない。手数料の値上げ期日は4月29日で、飲食業界の売上が持ち直すとみられる時期のはるか前だ。
グラブハブに批判的な人たちからは、この施策もまた、同社が表向きは救済措置を提供する企業との印象を与えながら、実際は売上減に苦しむ飲食業界の危機的な現実に対して救いの手を差し伸べる気がないことを示す端的な例だ、との声が上がっている。
フォーブスが入手した、グラブハブ顧客担当者からのメールによると、同社はレストランの経営者に対し、グラブハブのマーケティング・プラットフォームでの「エクスポージャー」を30日間にわたって5%アップさせるという施策を提案している。ただし、これが実施されるのは、レストラン経営者が4月29日以降、マーケティング手数料の料率を3%引き上げることに同意した場合のみである旨も記されている。
批判の対象となっているのは、この料率アップ期日の4月29日までに、通常営業に戻ることはおろか、売上が持ち直すレストランでさえ、まずあり得ない点だ。現状では、多くの政府高官が国民に対し、新型コロナウイルスの感染拡大防止のためのさまざまな禁止措置は、6月いっぱいは解除されないとの見通しを示している。
グラブハブが本社を構えるイリノイ州シカゴでも、J.B.プリツカ知事の命令により、レストランは4月30日までディナー営業を禁止されている状況だ。
グラブハブの広報担当者は、声明で以下のように釈明した。「お問い合わせのあったプログラムを使うかどうかは完全に任意です。これは、私たちが過去10年にわたり採用してきたツールであり、レストラン側がそれだけの価値があると判断した場合に、利用料と引き換えに、エクスポージャーを増やすという選択肢を提供しています。これは私たちのプラットフォームの一部です。この機会を活用したいというレストランもあれば、しないというレストランもあるでしょう。マーケティング手数料の料率変更は、いかなるものであっても選択するかどうかは完全に任意で、いつでも変更が可能であり、可否を決めるのはレストラン側です」
一方、飲食店情報サイト「イーター(Eater)」の報道によると、グラブハブの提案する施策には、ほかにも問題の多いものがあるという。
そこで指摘されているのは、「サパー・フォー・サポート(Supper for Support、支援のための夕食)」と銘打たれたレストランの売上アップを狙うプロモーション施策で、夕食の時間帯にグラブハブ経由でオーダーした料理の代金が10ドル割引になるというものだ。だがこちらも、グラブハブが受け取る手数料は全く変わらない設定のため、この割引は、すでに激減しているレストランの売上を削ることになるとの問題点が指摘されている。
グラブハブはこの施策についても、採用するかどうかはパートナーであるレストラン側に任されていると反論しているが、以下のように、この施策のメリットを強調することも忘れなかった。「この施策オプションを採用した各地のレストランでは、オーダー数が平均で20%以上アップし、総売上も上昇しています」