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Michael H /Getty Images

カリスマシェフと研究開発を行う「技術者」は、新しく何かを生み出す「創造」のスタイルやアプローチが似ていると思うことがよくあります。

次から次へと新しいレシピを創造し、旬の食材を見事に使いこなし、見たこともない新しい料理をつくっていく。また、朝から市場に繰り出し、売り手との短い会話から、目の前の魚介の鮮度や美味しさを見極める目利きの力を持ったシェフたち。

手に入れた食材を、最適な調理法や新開発の味付けや素材の組み合わせで、次々と素晴らしい料理に仕上げていく姿。さらにでき上がった料理を皿に盛り付ける表現力も素晴らしく、まさしく眼福と言う言葉がぴったりくるような美しい料理をもつくってしまう、圧倒的かつ芸術の域にも達した技量には目を見張るばかりです。

英語ではよく、技術の最高峰のレベルの状態を「State of art (芸術の域)」という表現を用います。われわれ技術者も、開発して世に出していく製品やサービスを、ぜひとも「芸術の域」のレベルまでもっていくことを目指したいものです。

製品やサービスをつくる過程では、アートやデザインも関係してきます。例えばそれは、一般的に、自動車や電子機器の外観における工業デザインだけだと理解されがちですが、昨今では、ハードウェアよりもソフトウェアにおいて、アートやデザインが役に立っています。

ソフトウェア構造の内面的な美しさが、機能や体験に大きく反映され、製品の評価を左右することにもなっているのです。つまり、外観だけではない、製品やサービスを構成するさまざまな要素において、アート性や芸術性という新たな視点が勃興しており、製品やサービスを創造するうえで、重要で注目すべき点になっているのだと思います。

技術開発の仕事に長らく携わっていると、膨大な種類の技術要素を見れば、それらをどう組み合わせたら、これまでになかった新しい製品やサービスがつくれそうかという推察が、かなりの精度でできるようになってきます。

そして、シェフが足りない素材や加えるべき調味料、必要な調理プロセスなどを適切に判断しならが料理に仕上げていくように、技術者も最終形の製品やサービスにするのに、足りない技術があり、それはすぐに実用化されるのか、されないのかといった入手可能性も含めて、製品やサービスの「構想」を考えられるようになります。

文=茶谷公之

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