ライフスタイル

2020.04.02 08:00

「寝不足自慢」にピリオドを。働き方改革を後押しする睡眠の可能性

(左)ワーク・ライフバランスの小室淑恵 (右)ニューロスペースCEOの小林孝徳


小室:なるほど。睡眠の状態を材料に自分の体調を発信したりできる文化ですね。そういえば、わたし昨年、自分の健康状態に危機感を持った時、睡眠時間計測アプリの画面を社員たちに送ったことがあります。長男と次男のダブル受験でストレスと忙しさで睡眠時間が短くなり、これまで22時から5時でピシッと整っていた睡眠グラフが崩れてしまって。「ちょっと、みんな見て!わたしこんなに眠れていない」って(笑)。
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小林:まさにそういうことです。睡眠時間のデータを通じて「ちゃんと眠れていないから、明日休ませてください」みたいなコミュニケーションができるようにしたい。

小室:熱や咳が出なくても、不調なときってありますよね。そういうときのエビデンスとして睡眠時間のデータを活用する、と。たしかにわたしも心当たりがありますね。単純ミスが増えたり、社員へのレスポンスが厳しくなったり。事前に睡眠時間のデータを共有できていたら、周りも気を遣わなくて済みますもんね。

小林:科学的にも睡眠時間が短いと怒りっぽくなったり、ミスしやすくなったりするというデータが出ていますからね。ちなみにお恥ずかしい話ですが、今日わたしは睡眠時間が30分ぐらい足りていないんですよ。
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小室:小林さんほどになると「睡眠時間が足りない」=「恥ずかしい」なんですね(笑)。

小林:恥ずかしいです(笑)。わたしたちが開発した睡眠習慣プログラム「lee BIZ」で睡眠をスコア化できるんですが、100点が出たときはSNSに載せているくらいですから。でも、スコアがいまいちのときは周囲との接し方にすごく気を使えるようになるんですよ。

小室:なるほど。チューニングができるんですね。「今日の自分は少し危険だ」と。

小林:社内の一人ひとりがチューニングできれば、仲間への思いやりもできるようになるし、チーム全体の雰囲気も絶対に良くなる。結果として、売上も出るし、さらには企業価値につながっていくと思っています。それがニューロスペースのコンセプトです。

小室:ちなみにニューロスペースは、創業当時から順調でしたか?

小林:いいえ、全く(笑)。1〜2年は地獄のような起業家生活でしたね。そもそも従業員の睡眠に対してお金を払う企業なんてなかったので。

小室:御社が創業した2013年は、ようやく「ワークライフバランス」という言葉が市民権を得てきたぐらいのタイミングですもんね。「睡眠で働き方改革」なんて誰も考えていなかったと思います。

わたしは2014年9月に産業競争力会議の民間議員に就任したんですが、当時は、むしろ労働時間の管理なんてなくしてしまえ、というホワイトカラー・エグゼンプションの話題一色。2014年8月ぐらいまでは「年収750万円以上のビジネスパーソンの残業時間はカウントしない」という論調だったんです。それなのに、わたしは9月に就任してすぐに「労働時間に上限を設けたほうがいい」と発言して、ものすごく変な空気になったのを覚えています(笑)。

結果として、年収750万以上の人は時間管理しないという法案が国会を通る前に形勢逆転し、労働時間に上限をつけることの重要性が理解されて「働き方改革担当大臣」が出来たのですが、もし万が一間に合わなくて、あの法案がすんなり国会を通過していたらかなり危なかったと思いますね。
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文=田中嘉人 写真=帆足宗洋

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