少子高齢化が進むなか、公的年金制度を持続可能にするためにも、「生涯現役社会」の実現が求められている。では、それはいったい、どのような働き方なのだろうか。
これからの人口構造の変化を考えると、高齢世代が若年世代から一方的に支援される片務的世代間扶助では、社会の持続可能性を維持することは困難だ。若年世代の負担を軽減するためには、より多くの高齢者が、若年世代を支える側に回る必要があるだろう。
高齢者は、時間的自由度が高い人も多く、休日や早朝の短時間勤務が適している場合もある。地域で過ごす時間も長く、若年世代の子育てを支援することもできる。若年層と高齢層が競合するのではなく、各世代がそれぞれの特性を活かした仕事を選択し、相互補完的な働き方を模索することが必要だ。
若年世代が安心して働ける雇用環境や子育て環境の整備のために、高齢世代の積極的な関与が、互恵的な世代間相互扶助を生む。また、支援の必要な高齢者を元気な高齢者が支える、高齢世代における世代内扶助も重要だ。高齢世代も社会の支え手として活躍することにより、世代間と世代内のふたつの相互扶助が可能になるだろう。
在職老齢年金は将来的には廃止?
日本の公的年金制度は、「賦課方式」と呼ばれる世代間扶助の考えに基づいている。年金支給の財源にその時々の保険料収入を充てるという、現役世代から高齢世代への仕送り方式だ。
「賦課方式」は、現役時代に将来自分が受給する年金財源を積み立てておく「積立方式」に対し、インフレなどの経済状況の変化に対応できるという利点がある。一方、少子高齢化により人口構造が逆ピラミッド型になると、現役世代の負担が著しく大きくなることが課題だ。
現行の厚生年金制度のひとつである在職老齢年金(老齢厚生年金を受給しながら就労して報酬を得る場合に適用される)は、賃金と報酬比例部分の年金を合わせた収入が基準額を超えると、支給額が減額される。現行の基準額は、60~64歳で月額28万円、65歳以上で47万円だ。
来年度の年金制度改革では、65歳以上の減額基準の引き上げは見送られた。高所得者を優遇することにつながり、高齢世代内の一層の経済格差を拡大し、将来世代の所得代替率の低下を招くことになりかねないからだ。
今回は、60~64歳の基準額は、就業意欲を損ねないように47万円への引き上げが決まった。人口減少が続く日本では、労働力人口確保のため高齢者や女性の就業促進が必要だ。そのため高齢者の就業意欲を阻害する可能性のある在職老齢年金制度を将来的に廃止するという意見もある。
内閣府の意識調査では、現在仕事をしている60歳以上の約8割が、高齢期も高い就業意欲を持っている。それは多くの高齢者が、年金が減額されると就業調整を図るのではなく、将来の年金不安から「働けるうちは働かざるを得ない」という意識の表れとも理解できよう。