飲酒日1日あたりの飲酒量の変化~多く飲む層が減り、中間層や少ない層が増加
飲酒習慣のない若者が増える一方、飲酒をする層の飲酒量には変化があったのだろうか。
2007年と2017年の飲酒日1日あたりの飲酒量を比べると、全体では「1合未満」や「3合以上」が減る一方、1合以上3合未満の中間層が増えている(図表略)。なお、もともと飲酒量の多い中高年男性では中間層が、若者では少ない層が多い傾向がある。
20歳代では、男性は「3合以上」が減り「2合以上3合未満」が増えたことで中間層が増え、女性は「1合以上2合未満」が減り「1合未満」が増えたことで飲酒量の少ない層が増えている(図表7)。
(資料)厚生労働省「国民健康栄養調査」より作成
広がる「ソーバーキュリアス」、今後は薄く飲む層へのアプローチが鍵?
あえて飲まない「ソーバーキュリアス」が20代のおよそ4分の1を占め、「若者のアルコール離れ」はさらに進んでいる。この根底には、何につけても情報通のデジタルネイティブを中心とした健康意識の高まりや予防医学への関心の高まりがあると見られ、今後もこの潮流は続くと考えている。
一方で、若者では職場の「飲み会離れ」や「交流離れ」も生じているのかと言えば、必ずしもそうではない。日本能率協会「2019年度新入社員意識調査」によると、新入社員の上司を交えた飲み会や社内イベントへの参加意向は6割を超えている。あくまでも、「飲みニケーション」から離れているだけであり、職場の「コミュニケーション」から離れているわけではなさそうだ。
このような中、既存の酒造業や居酒屋などの飲酒が主目的の外食産業はどうすれば良いのだろうか。訪日客の増加などにより日本酒等への関心が高まる中、越境ECを通じた輸出には期待できるだろう。
一方、国内に向けては、例えば、薄く飲む層に向けたアプローチが考えられる。この場合、アルコールへの関心は必ずしも高くないため、アルコールという入口から考えるのではなく、ライフスタイルのどこにアルコールがはまるのかという視点が重要だ。いかに「自分ごと」に感じてもらえる商品を訴求できるかが鍵であり、それは低アルコール商品なのかもしれないし、商品のボトルの形やパッケージにあるのかもしれない。
(この記事は、ニッセイ基礎研究所レポート(2020年2月3日)からの転載です)