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2020.03.26 07:30

若者の飲酒離れ「ソーバーキュリアス」に打つ手はあるのか

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飲酒頻度の変化~若者の4分の1程度があえて飲まない「ソーバーキュリアス」


「国民健康栄養調査」では、2003年以降は、飲酒の頻度や飲酒日1日あたりの飲酒量も調べているため、これらの状況を見ていきたい。
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まず、飲酒の頻度について、2007年と2017年を比べると、全体では男女とも「毎日」が減り、「ほとんど飲まない(飲めない)」が増えており、特に男性で顕著である(図表4)。なお、40歳代の男性などの飲酒習慣率の高い層では、「毎日」が減って「週1~2回」や「月1~3回」が増えるなど、頻度が低下している様子も見られる。

20~30歳代では、昔から中高年男性と比べて「ほとんど飲まない(飲めない)」割合が比較的高いのだが、2017年ではさらに増え、男性の4~5割、女性の6割を占めるようになっている。つまり、今の若者の過半数は日頃、ほとんど飲酒をしていない。

なお、もともと若い年代では飲酒をする場合でも、「月に1~3回」や「週1~2回」といった低頻度が多い。一方、40~50代では「毎日」が最も多い。成人して飲酒をし始め、さらに、社会人となって会合なども増えて生活リズムが変わることで、飲酒が徐々に習慣化していく様子がうかがえる。
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男性20代の飲酒頻度の変化
女性20代の飲酒量の変化
男性30代の飲酒量の変化
女性30代の飲酒量の変化
男性40代飲酒頻度
女性40代飲酒頻度
(注1)±5%以上変化があったものに◯印
(注2)2017調査の「ほとんど飲まない(飲めない)」は「ほとんど飲まない」と「飲まない(飲めない)」の合算
(資料)厚生労働省「国民健康栄養調査」より作成


ところで、2017年調査では「ほとんど飲まない(飲めない)」を「ほとんど飲まない」と「飲まない(飲めない)」に分けて見ており、飲まない層についてより詳しい状況が分かる*3。

飲酒を「やめた」「ほとんど飲まない」「飲まない(飲めない)」の3つをあわせた『飲まない』層は、全体(70歳以上も含む)では男性38.6%、女性70.5%、このうち「やめた」・「ほとんど飲まない」の2つをあわせた『飲めるけれど、ほとんど飲まない』層は、男性17.0%(飲まない層の44.0%)、女性18.2%(25.8%)を占める(図表略)。

一方、20歳代では『飲まない』層は男性51.4%、女性62.1%、このうち『飲めるけれど、ほとんど飲まない』層は男性28.6%(55.6%)、女性では24.7%(39.8%)である。このように『飲めるけれど、ほとんど飲まない』層は、若い年代で多い傾向がある(図表5・6)。

飲酒頻度の分布グラフ
(資料)厚生労働省「平成29年国民健康栄養調査」より作成

年代別飲酒の頻度3分類
(注)「飲む」は「毎日」「週5-6日」週3-4日」「週1-2日」「月に1-3日」、「飲めるけれど、ほとんど飲まない」 は「やめた」「ほとんど飲まない」の合計。(資料)厚生労働省「平成29年国民健康栄養調査」より作成

(※3)2014年調査から「ほとんど飲まない(飲めない)」を「ほとんど飲まない」と「飲まない(飲めない)」に分けて見ているが、2014年〜2017年については20・30代では主だった変化は見られない。


冒頭で触れたように、最近、米国ではミレニアル世代を中心に「ソーバーキュリアス(Sober Curious)」という自分の身体や精神の健康を考えて、あえて飲酒をしないという動きが見られる。Soberは「しらふの、酒を飲んでいない、普段酒を飲まない」、Curiousは「好奇心の強い、~したがる」といった意味であり、Sober Curiousは「しらふでいたがる」というニュアンスになるだろう。

日本の若者を見ても、半数程度は日ごろからアルコールを飲んでおらず、そのうち半数程度は『飲めるけれど、ほとんど飲まない』層であり、他年代と比べて多いことが特徴的だ。米国ほど意識的なものではないかもしれないが、今の日本の若者の4分の1程度に「ソーバーキュリアス」傾向があるようだ。
次ページ > “薄く飲む”層とは?ネクストアプローチの鍵

文=久我尚子(ニッセイ基礎研究所 主任研究員)

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