今回のDIは、2月26日から28日の3日間、ケープタウン市内のオペラハウスを会場にして開催された。世界各地から招待された36組の登壇者が登場するメインプログラムでは、プレゼンテーションに加え、音楽や映像やダンスを交えた多彩なパフォーマンスが繰り広げられ、その模様は隣接のホールをはじめ、ヨハネスブルグ、ダーバン、ケニアのナイロビの会場でも同時中継された。
DIが掲げるテーマは、「A better world through creativity(クリエイティビティを通じて世界を良くする)」。会議は年1回の開催だが、同名のオンラインメディアを通じて、アフリカに重点を置いたクリエイティブ業界に関する動向を随時発信している。他にも、シンクタンク(Think Tank)ならぬドゥータンク(Do Tank)として、ワークショップやデザインプロジェクトを実施している。
会場の外では、アフリカ発のデザインプロダクトの展示と投票も行われた
クリエイティブ界のダボス会議
今回で25周年を迎えるDIは、南アフリカの人種隔離政策アパルトヘイトが撤廃された翌年の1995年にスタート、運営会社のインタラクティブ・アフリカを経営する起業家ラビ・ナイドゥー(Ravi Naidoo)が立ち上げた。
グラフィックデザイン、音楽、ファッション、建築など、あらゆるジャンルを網羅的に扱っているDIに、南アフリカの文科省も全面的に協力しており、今年の会議には観光局も参画した。クリエイティブ産業を南アフリカ経済の柱にするだけでなく、対外的なソフトパワー強化に繋げたいという意図もあるという。
創設者のラビ・ナイドゥー(後ろにいるのは観光局長のSisa Ntshona)
DIのサイトには、「DIは特にアフリカ発のクリエイティビティに焦点を置き、99%の“持たざる者”の生活向上に繋がるようなデザインに特化して扱う」という記載がある。そこからは、アフリカの課題をアフリカ(人)発のデザインで解決するという力強い姿勢が読み取れる。
今年のDIのイベントにおいては、筆者の集計ではアフリカ系のプレゼンターは9組で全体の25%、アフリカの視点や文脈が取り入れられた内容のプレゼンは全体の約3割だった。オンラインメディアとしては、アフリカに重点を置いていることがDIの優位性だが、実際の会議では、アフリカに特化した内容については、不十分という印象を受けた。
一方、会議における議題や登壇者のグローバル性という意味においては、アフリカもまたグローバル化した世界の一部なのだということを、色濃く反映していた。