コロナ拡大で考える、非常時に有効な「リーダーの対応」

3月2日の東京都内の様子(Getty Images)

コロナウイルスの感染が拡大し続けている今、数多くのイベントが中止になり、多くの企業では在宅勤務が推奨されています。僕自身、登壇予定の企画、参加予定のイベントなどはすべてキャンセルになりました。

今回のようなパニックが起きた場合、組織のリーダーはどのような考え方を軸に、判断を下していくべきなのでしょうか。あらゆる組織のリーダーの対応を見ていて、自分なりに考えていたことがあります。

「性弱説」の視点はあるか?


まず前提条件として、人は混乱やパニックに巻き込まれたときほど、非常に視野が狭くなる生き物だと思います。そのため、たった今目の前にある情報だけを選択してしまうので、結果としてパニックを助長させたり、誤った判断をしてしまいがちです。つまり、人は混乱に弱いという「性弱説」を念頭に組織の仕組みを整えていく必要があります。

ただ、日本は比較的、人間は良心に基づいて行動するという「性善説」をもとに社会の仕組みが成り立っているので、パニックが起きると多くの人は“善悪”のみでものごとを判断してしまいがちです。しかしそれでは、人は混乱に弱いという「性弱説」的な視点を見落としてしまうので、誤った人の行動が助長されてしまうことがあるのです。

例えば、大企業の新人社員が体調を崩し、コロナ感染の疑いがあったとします。このとき、新人社員はすぐに会社を休んで病院へ行くでしょうか? おそらく多くの場合、「上司や周りに迷惑をかけるのが申し訳ない」とか、「自分のせいでプロジェクトが進まなくなったら怒られる」などと考え、無理にでも会社に行き続けるでしょう。

なぜなら、ただでさえ立場が弱く、さらに体調不良で弱っている人は、目の前にある恐怖が最もクローズアップされてしまうので、いかに恐怖を回避するかを念頭に行動してしまうからです。そして多くの場合、コロナ感染の可能性より、上司に怒られる可能性をはるかに恐れてしまう。つまり、立場の弱さ、混乱に巻き込まれた「人の弱さ」の問題です。

その結果、満員電車で会社へ通い続け、感染を拡大させてしまう可能性を生んでしまいます。だからこそ、組織のリーダーは「人は混乱に弱い」という性弱説を前提にして、仕組みを整えるべきだと思うのです。
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文=尾原和啓

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