スクールカーストなんて関係ない。「SDGsなクッキングバトル」の勝者は?

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クッキングバトルに挑戦した学生たち

参加した生徒からは、「元々苦手な食材も、一緒に作って一緒に食べれば美味しく食べられた」「レシピに頼らずみんなで自由に作ったら、料理への抵抗感がなくなった」といった声があがった。またクリエイティブクッキングバトルで優勝した豊島岡女子学園の演劇部のチームは、培った独創性やエンターテインメント力が料理にも発揮され、称賛の声を浴びていた。

スクールカーストから自由になる

とりわけ一般的な学校では、子どもたちを成績など、目に見えてわかりやすいもので評価する傾向にあると聞く。カーストやマウントといった言葉を借りると、その山の頂点近くにいる子ばかりに、どうしても注目が集まってしまう。そして、周囲から一目置かれ、自信のある子たちだけがこうした社会課題を扱う場に出ることが多いそうだ。

結果、日本の若者は世界的に見ても自己肯定感が著しく低くなり、SDGsのような社会課題を前にしたところで大半の子は、「自分がそんな大それたことを解決できるわけがない」「自分には関係ない」と、自らシャッターを下ろしてしまうことに繋がる。

だが、今回は料理が潤滑油となり、参加者に多様性が生まれ、それぞれの個性を認め合えるようなフラットな関係性ができていたように思う。ワークショップの感想に、「社会を変えるにはまず自分が変わることが一番大事」と書いていた子が何人もいて、料理がきっかけでそこまで気づいてくれたことに、私は胸がいっぱいになった。

もうひとつ、今回私が大いに心を動かされたのは、こうした生徒たちを見守り、支える先生方の姿勢だった。静岡聖光学院と聖学院は先生が主体、豊島岡女子学園は生徒が主体でのイベント開催だったが、いずれの場合も先生の役割は、自分が教えるのではなく子どもたち自身に体験させ、考えさせることに徹していた。

静岡聖光学院の平本直之先生は、「先入観を与え過ぎない、枠を設け過ぎないことを意識した」という。大人が先に抵抗感やハードルの高さを感じさせてしまうと、生徒が自由に考える機会や発想を阻害するからだ。

また、豊島岡女子学園の金沢雅人先生は、「これからは、自分たちで社会の課題を解決したいという『主体性』が大事になってくる時代。だからこそ、自分たちの力で企画を立て、企業と連携し、イベントを仕切ろうと奮闘していた生徒たちを応援したかった」と語る。特に生徒が主体となった同校の場合、金沢先生は一切お膳立てせず、彼女たちが試行錯誤し、自らの未熟さや至らなさに直面しながら紆余曲折を経て成長していく過程を、そっとセーフティーネットとして見守り、ゴールまで伴走していた。

今も学校は、生徒が受身的に教わるというスタイルが主流なので、生徒を信じて委ねる、任せるというやり方は、現場にとってものすごくチャレンジングでパワーのいることだと思う。けれど、聖学院の児浦良裕先生が「子ども自身が身近な料理を通じ、自分の手を動かし、頭を使うことによって、自分の行動が社会を変えられると気づけたのではないか」と振り返るように、子どもたちが自ら豊かな人生を切り拓き、SDGsが掲げる持続可能な社会の創り手となるには、信じて委ねる、任せるってことがとても大事なんだと、今回の先生方の姿から改めて教わった気がした。

今年は子どもたちが、「未来を変えるのは自分たちだ」と体験できる場を、料理を通じてもっとたくさん作っていけたらなと思っている。

連載:それ、「食」で解決できます!
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文=小竹貴子 構成=加藤紀子

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