以前は枝ものといえば生け花の世界のもので、一般的な花屋ではほとんど扱っていませんでした。青山フラワーマーケットでは、2015年にリブランドした際に「ブランチコレクション」という枝ものの定番商品を導入。すると「待ってました!」と言わんばかりに人気商品となり、現在ではすっかり定着し、何種も店頭に並んでいるくらいです。
なぜか──。年間を通して店頭に並ぶバラやガーベラなどと違って、桜は夏や秋には咲かないし、紅葉は春に見ることができない。山々に植えられたものを、一本一本刈って出荷される枝ものの需要は、都心生活者が「季節を感じること」を大切にしているからだなと気づきました。
感覚はパソコンではわからない
我々は花を扱っていて、基本的に感性が豊かな人間の集まりであるはずですが、情報の多い現代社会では、どうしても「感じる」力が弱くなり、つい頭で「考える」癖がついてしまいがちです。
以前、本社の一階にカフェを作ったときのこと。内装を手がけたトップのデザイナーがパソコンを見ながら、入り口の幅について「社長、800mmにするか900mmにするか、どう思います?」と聞いてきました。5階にいて、1階に降りれば現場があるにも関わらず、パソコン上で考えていたのです。
私はすかさず、「下に行って、お客さまがそこを通った時に心地よく感じられる幅はどんなものか、自分の肌で感じて来い!」と言って現場に行かせました。映画「燃えよドラゴン」のブルース・リーの名言「Don’t think, Feel(考えるな、感じろ)」ですね。ときに、自分の経験値という情報も、「感じる」力を弱めるものになり得ることを、デザイナーに再び感じてほしかったのです。
Matt Leung / Shutterstock.com
そうして感覚を大切にしてつくった結果、訪れる方々に「こんな空間は初めて」と感動していただける、花と緑に包まれた「温室」ができました。
「感じる」フワラーパークを
感じることを求めながらも、それを実行するのが難しい。そんな問題について考えている中で、弊社は茨城県フラワーパークのリニューアルを手がけることなりました。今まで「見る(鑑賞)」中心だったパークをどう変えていくか、関係者でキャッチフレーズを決める機会に、私は「Feel」を提案しました。
最新のバラを見るのみならず、様々なバラの香りを嗅いだり、自然豊かな土地でできた地元が誇る食材を食べたり、小鳥のさえずりを聞いたり……。実際に花に触れて身近に植物を感じることができるワークショッププレイスも併設し、五感を使って「感じる」ことができる場所にしたいと考えています。
フラワーパークで展示予定のバラ、ペネロペイア(左)とダフネ(右)
「感じる」の動機は人それぞれです。何気ない風の音や虫の音に感化されることもあるでしょう。まずは、枝ものや花を身近な所に置く事で、季節を「感じ」、五感に刺激を与えてみてはいかがでしょうか?
連載:Living With Flowers Every Day
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