「同意のない性行為」にNO!レイプの定義を一新するスウェーデンの性犯罪規定とは

左からヴィヴェカ・ロング(スウェーデン司法省上級顧問) 、ヘドヴィク・トロスト氏(スウェーデン検察庁上級法務担当) =スウェーデン大使館提供


国家として「メッセージ」を発信すること



(Shutterstock)

このような背景から2018年、ついに同意に基づく性犯罪法が可決した。この法律下では性行為への自発的参加を要件とする。先述の通り、行為者が参加の意思を確認していなければ、日本のように暴力や脅迫がなくてもレイプと認められるのだ。

「この改革には、2つ主な狙いがあります」とヘドウィック上級法務担当は述べる。1つ目は同意が必要であることが規範であるというメッセージを、国家として発信すること。

「法律ではっきりと、同意のない性行為が違法であり、見逃されて良いものではない」というメッセージを打ち出した。これにより、社会全体の国民の考え方を、変える狙いがある。

2つ目は、過去の法改正において、性犯罪の実態を考慮していないという、国民の不満を反映させることだ。従来の法律では、望まない性行為であっても、被害者が受け身であったと判断されれば、無罪であった。

どのような事案があったのか。あるミュージックフェスティバルでの被害が、例として言及された。加害者は、若い女性の後ろに立って、指をスカートの下から、膣に挿入した。「これは重大な性犯罪として扱われるべきでしょう。しかしかつての法律ではそれができなかった」とヘドウィック上級顧問は語る。被害者は驚いて、反応することができなかった。暴力や脅迫がなかったために、レイプとしては認められなかったのだ。

しかし、性犯罪は、極度の恐怖により、抵抗できない被害者が多いのが実態だ。「本来はレイプとみなされるべき事案について、保護をすることができなかった」ことが多々あった。このようなことから、反対の意向を示す市民の声を法改正に反映させたという。

一方、日本では、2017年の刑法の性犯罪規定の改正から3年が経ったいま、「刑法改正市民プロジェクト」の動きがある。2020年の刑法見直し時期に向けて、法改正の実現を求める市民たちの動きだ。男女関わらず、自分の身体を尊重し、自身で決定できるような社会を実現するために、スウェーデンの法改正から学ぶべきことは多いだろう。

文=初見真菜

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