「京都の社寺を中心に提携しながら、将来的にはこの取り組みを日本各地へと広げていく予定。当時、最先端で活躍していたアーティストの狩野永徳や長谷川等伯の作品がお寺や神社で展示されていたように、日本の寺社で新しい音の体験を世界中のアーティストともに制作していきます」(成瀬)
今回の取り組みについて、このように語るのはon the trip代表の成瀬勇輝だ。on the tripはこれまでにお寺、美術館のオーディオガイドアプリを制作してきたが、なぜこのタイミングで“物語のある音楽”をつくることにしたのだろうか。
「いまの時代、スマートフォンを開けば、いつでも好きな場所で音楽が聴けます。とても便利になった一方で、個人的にはその場所で音楽を聴くからこそ、体験が変わることがあるんじゃないか、と思います。たとえば旅先で、その地に昔から伝わる民謡を発見したとき。あるいは、その土地について語られた歌に出会ったとき。それが旅のテーマソングとなり、ともに旅をしてくれます。
そしてその音を聴くたびに、あの時の旅の感動がよみがえってくる。決して、どこでもいいわけではありません。 今回、新たに始めるサウンドトリップは、音楽を聴くことで旅の体験をふくらませる実験です。どれもその地に関わりある音を使った、そこで体験することに意味のある音楽。それも寺社を中心に展開していきます。
当時、最先端で活躍していたアーティストの狩野永徳や長谷川等伯の作品がお寺で展示されていたように、寺社は文化サロンであり、伝統とは前衛の積み重ねだからこそ、物語のある音楽をとっかかりに、その地の物語を探ってほしいと思っています」
フィールドレコーディングで有名なYosi Horikawa。今回は三千院の音楽を制作した。
今後、Forbes JAPANではSOUND TRIPの仕掛け人である成瀬と、音楽を制作したアーティストたちの対談記事も掲載していく予定だ。