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文楽の舞台では、上手に太夫と三味線が演奏する「床」が設けられるのが特徴(イラストはイメージのため実際とは異なる部分があります)。Illustration by Vincent Lefrancois

大阪で生まれた庶民のエンタメにして、世界に類を見ない総合芸術、人形浄瑠璃文楽(にんぎょうじょうるりぶんらく)。商売人の手練手管、お家騒動、恋のもつれなど、いまも昔も変わらない日本人の心の機微を繊細かつエモーショナルに描く文楽は、世界で戦うビジネスパーソンにとって学びの宝庫だ。

文楽ファンを公言する小泉進次郎環境大臣は、こう熱弁する。

「文楽という時空の狭間、現実と虚構の狭間にハマりました」

ライフネット生命保険創業者の岩瀬大輔氏は「世界のリーダーになる人には、文楽は武器になる」と力説し、くまモンのデザインで知られる水野学氏は「日本のビジネスパーソンに必要なのは、想像力と美意識。文楽はそれを同時に学べる」と話す(Forbes JAPAN1月号「ビジネスに効く文楽」特集より)。

各界のリーダーたちを虜にする文楽だが、そもそもブンラクとは何なのか?

橋下徹氏が大阪市長時代にモメたアレでしょ……という記憶しかない人のために、早稲田大学演劇博物館副館長の児玉竜一教授がわかりやすく解説する。興味がある人もない人も、教養として知っておいて損はない。


Q1 文楽をひと言で説明すると?

A1 文楽は太夫、三味線、人形の芝居が一体になった演劇です。

物語の語り手である「太夫」は義太夫節のボーカリストで、登場人物のセリフはもちろん、心理や情景の描写、時には運命予告や伝説の由来を語ります。「三味線」の奏でる音は単なるBGMではなく、情景や心象、人物の動く様子などをあらわし、ドラマの一部を担っています。登場人物の体の動きや表情を見せるのが「人形」です。太夫の語りと三味線の演奏、そして人形遣いがそれぞれの持ち場で力を尽くしてつくり上げる三業一体の舞台には、ここにしかないものばかりが結晶しています。

Q2 世界無形文化遺産というけれど、ただの人形劇でしょ?

A2 人形劇というと子ども向けのイメージがありますが、文楽は大人のエンターテインメント。人形劇(文楽)の台本を人間(歌舞伎)が流用するという、世界的に類を見ない事象の発信源なのです。類を見ないのはそれだけではありません。文楽の人形操法は、人形遣いが3人で1体の人形を操る「三人遣い」という日本特有のもの。これにより、人間の俳優よりも、あるときは動きをダイナミックに、あるときは心情を繊細微妙に表現します。


人形の造形と仕掛けの完成度は、世界的に見ても極めて高い。

Q3 どこに行けば観られる?


A3 通常公演は、大阪・日本橋の国立文楽劇場と、東京・半蔵門の国立劇場小劇場です。この2劇場では若手会や、素浄瑠璃の会(人形はなく、太夫の語りと三味線だけで浄瑠璃を楽しむ)など、1〜2日の公演もあります。3月と10月には、文楽協会が制作する地方巡業も。また近年は、文楽をカジュアルに楽しめる「中之島文楽」、在阪民放5局が共同制作するバラエティ感覚の「うめだ文楽」、移動式の檜の野外劇場で巡業する「にっぽん文楽」など、ビギナー向けに趣向を凝らしたイベント企画も各地で催されるようになりました。


文楽の殿堂、大阪の国立文楽劇場。文楽上演のための国立劇場として1984年に開場。地下鉄日本橋駅至近の便利な場所にあり、文楽発祥の地である道頓堀にも程近い。

Q4 いつでも観られるの?

A4 大阪・国立文楽劇場では1月、4月、6月、7〜8月、11月、東京・国立劇場では2月、5月、9月、12月に通常公演が行われます。公演は毎日ではなく、大阪では月に24日間前後、東京では17日間前後の実施。技芸員自身が解説を行う「文楽鑑賞教室」公演や、社会人向けに上演開始が遅めの日、外国人向けに英語をまじえた解説の付く日も設定されています。ただ、思い立ってすぐ、というわけにはいきません(Q5参照)。これから観に行くなら、国立劇場「令和2年2月文楽公演」のチケットが現在発売中です。

国立劇場の2月文楽公演は、2020年2月8日(土)~24日(月)。学問の神様・菅原道真の失脚を題材にした『菅原伝授手習鑑(すがわらでんじゅてならいかがみ)』、歌舞伎でもよく知られる緊迫感あふれる演目『鳴響安宅新関(なりひびくあたかのしんせき)』勧進帳の段などを予定。


文=本橋ヒロ 写真=佐々木 康

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