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新型コロナウイルスへの対応で、厳しい入国制限や強制隔離を課すという米政府の決定は、公衆衛生に関する従来の勧告と相いれないものだ。たとえば、ジョンズ・ホプキンス大学の健康安全保障センターなどは最近、感染症のパンデミック(世界的大流行)に備えて「イベント201」というシミュレーションを実施しているが、そこで勧められた対策と今回の措置はまったく逆行している。

米政府が「対応」したのはむしろ、医療ニュースサイト「スタット(STAT)」でメーガン・シールキングが指摘しているように、右派の外国人嫌悪だったように思える。

新型コロナウイルスをめぐっては、保健当局や科学者が解明や感染の拡大防止に全力を挙げるなか、新しい情報が次々ともたらされている。

先週、新たに分かったことも、渡航制限などの有効性にあらためて疑問を突きつけた。特にドイツのケースから、新型コロナウイルスは症状が出る前の感染者からもうつる可能性があることが、ほぼ確実になったからだ。

簡単に言えば、隠されていたことが公然のものになった。つまり、新型コロナウイルスによるの肺炎の流行が明らかになる前の時点で、症状がまったくない感染者、あるいはごく軽い症状の感染者が、すでに大勢国境を越えていたのだ。ドイツのケースはまた、新型コロナウイルスがドアノブやペン、皿といった媒介物を通じて感染し得ることを、さらに支持するかたちにもなった。

さらに、感染者の便からウイルスのRNAが検出されたことも判明した。これ自体は、新型コロナウイルスが便からも感染することを示すものではないが、感染がどのように起こっているのかについて、新たな問題を提起したのは確かだろう。

振り返ると、昨年10月に開催されたイベント201はじつに啓発的だった。そこで国際的な専門家チームが訴えたメッセージでは、渡航禁止は逆効果であり、経済に甚大な打撃を与える恐れがあることを明確に指摘していた。また、エイズやエボラ出血熱などの流行でみられた通り、感染者への懲罰的な対応は感染を隠そうとする動きにつながり、かえって感染症の流行に拍車を掛けてしまうものなのだ。

世界保健機関(WHO)は1月30日、ようやく「国際的に懸念される公衆衛生上の緊急事態」を宣言した。事務局長のテドロス・アダノムは記者会見で「WHOとして、貿易や移動の制限は勧告しない」とし、各国に対して、証拠に基づいた一貫性のある決定をするように呼びかけている。

ジョンズ・ホプキンス大の研究者、タラ・カーク・セルも「渡航を制限したからといって、感染がこれ以上増えないと考えるべきではない」と警鐘を鳴らす。それはたんに、感染拡大をほんの少し遅らせられるかもしれない程度のものだとも述べている。

編集=江戸伸禎

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