「一度、正反対に振る」非凡なアイデアを生む思考法、セブンセンス吉田拓巳

10代の頃から世の中をあっと言わせるサービスや演出を手掛けてきた吉田拓巳氏(写真=小田駿一)


「思考を正反対に振ってみる」独特の発想方法


吉田氏は革新的なアイデアをどのように生み出しているのか。「パッとひらめくというよりは、日々の情報の足し算、掛け算によって出てくることが多いです」と語る。

さらに掘り下げると、このように答えた。「思考を一度、全く正反対のところに振ってみます。その差分のなかで何が生まれるかなと想像します」

正反対に振るとは、一体どういうことなのか。

例えば、MINMIのライブ。当時、撮影をOKにしてしまうとプレミアム感が薄れ、チケットが売れないのではないか、ライブDVDも売れないのではないかと言われていた。しかし写真撮影をOKにし、香りの演出などその場に足を運ぶことの体験価値を高める工夫により、結果的に来場者の満足度が高まったのだと振り返る。

セブンセンス 吉田拓巳
シンガポールで取材に応じた吉田拓巳氏(Shunichi Oda)

無料の移動サービス「nommoc」もその思考法から生まれたという。

「そもそも移動には必ずお金がかかるものである。それではどうすればお金がかからないようにできるのだろう、と考えたんです」。まさに思考を正反対に振ったことで生まれたのだ。

「リアル」でも無料の仕組みができないか


「移動にかかるお金から解放されれば、人の価値観は変わっていくのではないかと思いました。例えばインスタグラムやツイッターの利用者はそれらのサービスを無料で楽しむことができています。ネット上の多くのサービスが無料の仕組みになっている中で、リアルでも何らかの便益を享受しながらも無料であるという仕組みになっていったら、世界が変わりますよね」

そこに自身がこれまでの仕事で追求してきた「体験価値」を掛け合わせた。「利用者に移動しながら何らかの体験を提供することができないか。移動手段である車自体がポップアップショップのような存在になれば面白いと考えました」。そこでハーゲンダッツの事例が生まれたのだ。

吉田氏はさらに続けた。「移動だけでなく、例えば食事も無料で食べられるようなサービスができたら面白いですよね。普通は千円かかるランチを、お金を払わなくても食べられるような仕組みができないかな、と。そのように全く正反対の方向に考えていくことによって、社会の仕組み自体もより面白く変わっていくのではないかと思っています」

10代の頃から世の中をあっと言わせるようなサービスや演出を次々に手掛けてきた吉田氏。唯一無二の活躍を可能にしてきたその発想から学ぶところは多い。

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文=林亜季、写真=小田駿一

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