あと5年もすれば、7700万人にも上るベビーブーマー世代のなかの第一陣が80歳を迎える。体力が急激に衰え、手厚い介護やサービスが長期的に必要になり始める年齢だ。さらに2020年代が終わるころには、ベビーブーマー世代のなかでも年齢が上の数百万人が、介護や支援の必要性がさらに増す85歳に達する。
このように年齢を重視するのには理由がある。シンクタンク、アーバン・インスティチュート(Urban Institute)のリチャード・ジョンソン(Richard Johnson)が行った2019年の研究によると、65歳から74歳の高齢者の場合、高度な介護やサービスを長期的に必要とする人はわずか8%だが、この割合は、75歳から84歳になると17%に上昇する。ただし、この数字が本格的に変化するのはその数年後だ。85歳以上になると、40%が手厚い介護を必要とするようになる。10人中4人が、入浴や食事、着替えを含む日常的ないくつかの動作で人の手を借りなくてはならなくなるわけだ。
別の言い方をしてみよう。ジョンソンは、65歳から74歳のあいだに死亡する人の場合、亡くなる前に手厚い介護が必要となる可能性は五分五分であると割り出した。そして、85歳まで長生きした人の場合、同様の手厚い介護が亡くなる前に必要となる割合は75%に上る。
80歳以上の高齢者が2000万人に
年齢の上昇とともに有病率が高くなる病気の顕著な例が認知症だ。研究によって数字は異なるが、アメリカ国立衛生研究所(NIH)による信頼性の高い調査によれば、70代の高齢者で認知症を発症している人はわずか5%だ。しかし80代になると、4人に1人がアルツハイマー病や血管性認知症など、何らかの記憶障害と診断される。
年齢に関連した同様のパターンは、長期介護保険についても当てはまる。全米長期介護保険協会(American Association for Long Term Care Insurance)によれば、保険金請求全体の75%近くが80歳以上の高齢者が行ったものであり、45%は86歳以上の高齢者からだった。
ここで言う高齢者とは、いったいどのくらいの人数に上るのだろうか。米国勢調査局によると、2020年代が終わるころには、2000万人のアメリカ人が80歳以上、900万人近くが85歳以上に達しているという。