アマゾンの物流での強みは、高騰した株価を背景にした莫大な資金調達力だ。このクイックマネーで、アマゾンの物流に最適なフルフィルメントセンター(配送センター)をあっという間に全世界で250カ所つくり、倉庫や拠点の分散により、配送の時間を資金力で縮めている。
実は、アマゾンの配送施設は、フルフィルメントセンターだけでなく、返品センターや補助センター、デリバリーステーションやアウトバウンド仕分けステーションなど9種類もあり、それぞれがどのように機能しているのかは、社外の人間にはおよそ想像もつかない。
また、10万台のロボットが巨大な倉庫の中で移動する姿がユーチューブにも上がっているように、独自の輸送機やトラックやバンの購入もどんどん進んでいる。いまアメリカの都市を車で走れば、アマゾンの配送のバンの姿を嫌というほど見せられる。
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そうは言っても、しょせん効率化の工夫には限界がある。単位当たりの物流費は、こうした配送センターの充実、分散化によって確かに減少していくが、分散をすればするほど、在庫が増え、過剰在庫のリスクも抱えるというジレンマもある。
なので、ますますアマゾンは、メーカーに対して返品条件の緩和を求めていく交渉が必要となる。また、よく知られているように、ラストマイル(顧客までの最後のひと走り)は総物流費の半分のコストを占めており、都会のように家屋密集地ならよいが、森林地帯や農村地域などは特に非効率なため、アマゾンはどこよりも早くドローン配送の実現化を目指している。
アマゾンが社員教育の文化を変える?
とはいえ、いちばんの課題は、人材の定着だという。そのため、アマゾンの人事担当バイスプレジデントのベス・ガレッティ氏は、6年の間に700億円をかけて、先のフルフィルメントセンターの従業員やソフトウェア技術者に、社内でのデジタル訓練を施すと話している。
すなわち、世界水準でみても、最新のデジタル環境での職場教育を施すことが、社員への最高のボーナスであるということだ。少しでも給料の高い所へと転職してしまう物流業界において、この社員教育こそが社員定着率を最も高める要素だと分析している。ちなみに、過去5年間において、アマゾンはデータ技術者やネットワークセキュリティー技術者の雇用を5倍にまで伸ばしている。