──英語はどの時点で習得されたのですか。
大学での交換留学である程度はできるようになったのですが、ビジネスレベルまでは到達しませんでした。アメリカで仕事を始めた当初はとても苦労しましたね。
アメリカに転勤する際に、2つの職種のオプションを提示されました。ひとつはデータ分析系の仕事、もうひとつは対顧客のポジションです。具体的には機関投資家の投資モデル導入支援をする仕事でした。ノンネイティブの私にとって後者はとてもチャレンジングでした。
しかし、おそらくデータ分析をやっても英語は伸びないだろうなと思い、顧客と向き合う後者を選びました。初めの数カ月は大変でしたが、自分をそういう場に追い込んだからこそ、その後、英語が飛躍的に伸びたのかなと感じます。
──なぜそこからビジネススクールに通おうと思ったのでしょうか。
当時の自分は、アメリカで、アメリカ人と肩を並べるような仕事をしていました。完全に自分をアメリカ人化して、アメリカに溶け込んで、アメリカ人と互角にやっていけることを自分に証明させたかった時期でした。
「破壊的イノベーション」で有名な、HBSのクレイトン・クリステンセン教授の講義
今後アメリカでキャリアを築いていくためには、会社の外に出ても通用するようなビジネスのスキルをつけたいと感じ始めていました。アメリカ人が100%の環境で働いていると、プレゼンテーション能力や人を説得させるソフトスキルがいかに重要かを身に染みて実感したのです。
真面目にコツコツと仕事をするのは得意でしたが、リーダーシップを発揮して周りを巻き込んで物事を進めていく力が、まだまだ弱いと感じていました。
さらに、ウォールストリートで周囲を見てみると、ビジネス系職種においてはMBAは当たり前の世界で、周りにもMBAホルダーが多く、自然とMBA取得を考えるようになりました。
並行してCFAという国際的な証券アナリストの資格に受かっていたこともあり、金融や会計の知識的基盤は既にできているので、ソフトスキルに100%フォーカスできる環境に行きたいと思いました。数あるMBAのスクールの中でも、そのスキルを習得できる最適な場所が、ケースディスカッションをカリキュラムの基盤とするハーバードビジネススクール(HBS)でした。
──HBSに通って、自信はつきましたか。
HBSの授業は100%ディスカッションで、その発言の頻度と質によって成績が決まります。初めの1年は大変でしたが、何百というケースを繰り返すので、段々と慣れていきます。
「あ、こういうところでこういう発言をするとおそらく響くな」というコツが掴めてくるんです。優秀な同級生と、共に学びあい、激論を交わした2年間は大変貴重な経験となり、その後の自分の人格や心構えを形成する重要な分岐点になったと感じます。よくMBAというと、ROI(投資対効果)が悪いなどという人もいますが、自分の経験からするとそんな次元の話ではないと思うのです。