海外生活は、人生を大きく変える経験となる。外国で暮らしたことがある人(または外国帰りの知り合いがいる人)なら誰もが、その大きな影響については理解しているだろう。私はこれまでに4つの大陸に住み、60か国以上を旅したが、異国を訪れた時は毎回、異文化や自文化、そして自分自身について何かを学んだ。これは終わりなき観察、学習、内省、成長、そして挑戦のプロセスだ。
前出の研究チームは言及していないが、海外での居住・勤務経験は仕事の面でも人を変えることを、私はこれまでに目の当たりにし、自分でも経験してきた。他国での生活に内在する新しい経験や挑戦に心を開けるなら、人は新たな文化で暮らすことで仕事面でも急成長を遂げられる。
外国ではさまざまな新しい経験に直面し、立ち向かい、解決を迫られ、対処をしなくてはならない状況に置かれるため、私は外国で2年働くことは母国で5年働くのに匹敵すると考えるようになった。その経験は人生を変え、急激な成長をもたらす。
少し考えてみてほしい。自国にいれば毎日気にもしないうちに起こることが無数にある。コーヒーを注文し代金を支払う方法、会議の進行方法、打ち合わせでどの言語を使うか、病院の予約方法、光熱費などの支払い方法、職場までの道順、イベントには何を着て行ったらいいか、食料品を買う場所/方法/時間、ストーブの付け方、シャワーでお湯を出す方法、道路を渡る時に左右どちらを見るか、洗濯の仕方──こうした多くの些細なことを自動運転モードで行っている。
だが外国に住むと、自動運転モードではいられない。言葉やその土地独特の習慣が壁になり、生活の非常に些細なことについても注意を払わなければならない。結果として、観察力や意識が劇的に高まり、一つの目的(大小は問わない)に対する達成方法が一つだけではないことを理解するようになる。こうした力は当然、仕事にも生かせるものだ。一歩引いて観察し、状況を見極め、独創的なアプローチを考え、前に進む能力が継続的に鍛えられ、研ぎ澄まされる。