ビジネス

2020.01.07 07:00

1万円からはじめる「アートの共同保有」は、日本人の美意識を変えるか?



銀座 蔦屋書店(GINZA SIX 6階)でANDARTが共同保有する名和晃平『Throne』の展示イメージ (c) 2017 Nacasa & Partners Inc. all rights reserved.

日本中が「みんなの美術館」になる

ユーザー層は2、30代の男性が中心で、その半数以上がこれまでアートを購入したことがなかった人だという。既存のギャラリーが接点を持てなかったターゲット層に見事ハマった形だ。

「先日もオーナー優待会を行ないましたが、『アートをより近くに感じられた』『これをきっかけにオンラインでもアートを買ってみた』と、本当に好評でした。彼らはいわば、アートにアクセスする最初の権利を買ってくださったようなもの。これから私たちがいかにコミュニケーションして、みんなで『未来のアートコレクター』を育んでいくかが重要なのだと思います」(松園)

松園がこれほどアートに可能性をかけるのには、理由がある。彼女は学生時代、アートに特化したキュレーションサイト「みんなの美術館 アトコレ(現:MUSEY)」の創業に携わり、学生スタートアップシーンの最前線にいた。当時、ともに働いていたのは、現・クラウドワークス取締役副社長兼COOの成田修造氏や、個人投資家の中川綾太郎氏など、錚々たる顔ぶれだ。

「学生時代から自然と起業が選択肢にあったけど、周りのメンバーと比べたら、圧倒的に実力不足でした。一度、修行のつもりで就職して、経営者としての視点や組織作りの考え方を身につけようと考えました」。サイバーエージェントで新規事業に携わり、東京ガールズコレクションを運営するW TOKYOで渉外を担当した後、現在に至る。

「アートとの出会いはたまたまだったけど、自分が情熱を注いでやりきれるイメージが沸いたことと、アート市場の可能性を考えたとき、すぐやらないと絶対に後悔する。そう感じて、ANDARTをはじめたんです」(松園)

そしていま、実現しようとしているのは、日本全国がアートにあふれ、街中が「みんなの美術館」になる世界だ。

「これまで観たことのなかったものに触れて、『なんだろう?』『面白い!』と感じる。アーティストの背景や価値観を知って、より深く心を動かされる。それってきっと、ビジネスにもつながると思うんです。モノやサービスにまつわるストーリーが伝わって、共感されることで、ビジネスがうまくいく。そのきっかけをアートで生み出すことができれば。自分の『お気に入り』が見つかる喜びを、多くの人に知ってもらえたらと思うのです」(松園)

文=大矢幸世 写真=小田駿一

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