「株式市場は経済のあとを追う」と語るのは、ギリシャの農業開発副大臣コスタス・スクレカスだ。「ギリシャ経済は新政権のもとで変わりつつある。ギリシャの生産力をうまく活かせるようになっている」
カルディツァ銀行のリスクマネージャーを務めるサキス・テオロギスもそれに同意する。「ギリシャの株式市場は、いくつかの好ましい経済的要因により、大きく勢いづいている」とテオロギスは言う。「たとえば、3年連続の経済のプラス成長、消費者信頼感の回復、信用状態の改善、マイナス金利、不動産市場の回復といった要因だ」
アテネ商工会議所の顧問を務めるファニス・マツォプロスは、新政権の実施する改革も回復を後押ししていると見ている。「ギリシャの株式市場は、改革政策から生まれる期待を反映している。この政策は、2019年7月の選挙で勝利した中道右派政権が公約に掲げたものだ」とマツォプロスは話している。「具体的には、税率の引き下げ、国有企業の財務再編の推進、官僚制度や地下経済の問題に対応するための改革などだ」
とはいえ、ギリシャが多くの構造的問題に直面していることに変わりはない。その最たるものが銀行制度だ。そのため、テオロギスもマツォプロスも、回復の持続性には疑問を持っている。
「ギリシャの銀行制度は混乱しており、不良債権(NPL)が信用拡大の大きな障壁になっている」とマツォプロスは言う。「ギリシャの銀行が、NPLを効果的に管理し、自らの資本構成を最適化する方法を迅速に見つけることができれば、アテネ証券取引所は1000の大台を突破し、上昇が続くだろう」
「NPLは、ギリシャの銀行が慢性的に抱える問題だ」とテオロギスも指摘する。「NPLは銀行融資の45%を占めているが、この数字は欧州平均では5%だ。この問題への対処が、銀行の株価と市場全体の方向を決めることになるだろう」