こうした資金の押しつけも、無理もないことだ。こうした投資マネージャー、とりわけベンチャーキャピタルやプライベート・エクイティの投資マネージャーたちは、大量の投資用資金を預かっており、顧客との約束を果たし、手数料分を回収しないといけないからだ」
言い換えれば、いま私たちが目にしているものは、リアルな経済活動ではない。人工的な、そして前回の危機を終わらせた功績はあるがもっとずっと前に打ち切っているべきだった金融政策によって奨励された経済活動だ。
今や人々は、これが偽物であることに気づき始めている。その最初の証拠が、ウィーワーク(WeWork)のような「ユニコーン」企業の資金調達の失敗だ。初期の投資家たちは、新規株式公開(IPO)で自分たちの保有株をうまいこと無知な買い手に売りつけられると想定していたが、そうはいかなかった。
だがこれも、彼らが直面しているそのほかの脅威に比べれば小さな問題だ。
上昇する金利
マイナス金利を好んで導入してきた諸外国の政府は、心変わりをしつつある。日本銀行と欧州中央銀行は、マイナス金利からの脱却を図っており、これらの国の商業銀行部門は利益を生み出すのがますます難しくなっている。
そして、進歩的な左派の多くが銀行についてどう考えていようと、銀行は経済の欠かせない一部だ。
アメリカでは、FRB(連邦準備制度理事会)による短期金利の引き下げが長期金利の上昇を招いており、イールドカーブ(利回り曲線)を逆転させている。その理由の一部には、増え続ける政府の債務をカバーするために、財務省がT-Bill(財務省短期証券)を売るのをFRBが「手助け」しなければならないからだ。
これは、金利負担をわずかに削減するのに役立つ。満期までの平均残存期間が短くなれば、財務省が支払う金利は低くなるからだ。だが一方で、長期債に回る資金が少なくなり、その金利は押し上げられることになる。そして、非常に多くの人が、永遠に借り換えをし続ければいいと考えているため、借り入れ需要の落ち込みはみられない。
だがいずれ、こうした状況も変わっていくだろう。過大な借入金にあえぐ企業が経営難に陥っていくなか(多くの場合はそもそも起業自体が失敗だったのだが)、銀行家たちは貸付基準を厳格化させ、ドミノが崩れ始めていくだろう。