つまり、たとえばポテトチップスの袋に表示されているカロリーのかわりに(もしくはカロリーと並んで)、その摂取カロリーを消費するのには16分のランニングか31分のウォーキングが必要、と記載するわけだ。
一般の人々が食品を適切に選択できるようサポートする現在のシステムには、どうやら期待しているほどの効果はないようだ。肥満率は依然として、心配の種になっている。そうしたことから、より良い選択を促進できそうな別の啓蒙方法や情報提供の形を探ることがきわめて重要となっている。
前述の論文で提案されている方法に対しては、批判の声もあがっている。食品のカロリーを消費するのに必要な運動量を提示する方法は、1日に必要なカロリー量が説明されていないため、誤解を招きかねないというのだ。人によってカロリー消費量が違うことや、身体に障害があって、問題なく歩いたり走ったりできない人が考慮されていないという問題もある。
運動をしなければ食べてはいけない、という印象を与えるが、そうした印象には悪影響があるという懸念もある。人は誰でも、自分にできる身体的活動や、自分の選んだ身体的活動の量に関係なく、食べる必要があるためだ。
さらに、摂食障害の患者をめぐる懸念もある。摂食障害患者を支援する慈善団体「ビート(Beat)」のトム・クイン(Tom Quinn)は、BBCに対して次のように語っている。「肥満を減らすことの重要性は認識しているが、そうした食品表示は、摂食障害に苦しむ人や、摂食障害に陥る危険性の高い人にとっては、きわめて大きな発症の引き金になるおそれがある」
「摂食障害を抱える人の多くは、行き過ぎた運動に苦しんでいる。そのため、特定の食品のカロリーを消費するのに必要な運動量を逐一伝えると、症状が悪化するおそれがある」
悪影響を及ぼす可能性のある新システムの導入は、絶対に避けなければならない。その一方で、現行のカロリー表示システムもすでに、摂食障害患者や、食事と運動に関して不調をきたしやすい人が、摂食量をコントロールし、「必要」な運動量を測る手段になっていることも認識しておくべきだろう。そうした人たちにとって、提案されている新システムが現行システムよりも害になるかどうかは、さらに詳しく調べなければわからない。