3. 盗品取引の市場を無効化
電球から自動車、洗濯機などあらゆるものがスマート化され、インターネットでつながれば、誰も盗品の購入に関心を示さなくなるという大きな効果が生じます。「Find my iPhone(iPhoneを探す)」のような機能があれば、インターネットに接続するとすぐに所有者にデバイスの位置情報が通知されます。
多くの場合、所有者は、デバイスの利用者や利用地域が限定されるよう、プログラムを設定していることでしょう。
スマート自動運転車なら、車両の位置を毎秒追跡できるため、自動車の盗難はなくなります。将来的には、スマート・タグを付けることで、高価な芸術品の盗難や偽造も防止されるでしょう。
デジタル化の負の面:新たなタイプの犯罪
一方で、デジタル化により、民間企業や自国政府、さらには他国政府による監視も強まるという側面があります。適切な法的枠組みを設けなければ、社会のデジタル化によって想定外の悪影響が生じ、犯罪のない社会の実現が遠のくかもしれません。
例えば、自動運転車やスマート住宅がハッキングされ、身代金を支払わなければ解除できないといった新たなタイプのデジタル犯罪が発生するでしょう。さらに恐ろしいのは、体内型の医療機器へのハッキング。最初のサイバー殺人が発生するのはいつになるでしょうか。
デジタル化が進めば、生活の大半がスマートフォン上で管理されるようになるため、盗難に遭ったスマートフォンの闇市場における価値は上昇。犯罪者が被害者の資産に手を付けることはないとしても、闇市場では個人情報に高い価値があります。スマートフォンの保護は最優先課題とすべきでしょう。
犯罪の撲滅
2030年には、今日の社会を悩ませている多くの犯罪が、デジタル化によって大幅に減少するでしょう。従来のデジタル化のメリットに加え、犯罪が減少することで多くの資金が節約されます。例えば、裁判所での訴訟の減少、弁護士費用の軽減、保険金の減少のほか、汚職がなくなることによる行政運営の効率化といったことが考えられます。さらに、警察はこれまでのように犯罪の取り締まりに追われることがなくなるかもしれません。現在、犯罪で荒廃した国では、さまざまなタイプの犯罪が横行していますが、より快適、平和、かつ豊かな犯罪のない社会の構築を望むこうした国々にとって、デジタル化は最も強力なツールになるでしょう。
(この記事は、世界経済フォーラムのAgendaから転載したものです)