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2019.12.26 20:00

人とのつながりは多いほどいい? これからの「幸福マネジメント」

Tom Werner / Getty Images


これら5つの「幸福」の要素に加えて、私は「時間の幸福」が重要だと考える。
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物理的には同じ「時間」であっても、主観的な「時間」、すなわち「時感」は異なる。「時間」に従属するのと、「時間」の主体(オーナー)になるのとでは「時感」に対して大きな差が生じる。人と待ち合わせる場合、「待たされる」と思うと「時間」に従属することになるが、主体的に「待つ」と時間のオーナーシップを持つことになり、「待つ」こと自体が結構楽しくなる。

ミヒャエル・エンデの「モモ」は、時間泥棒に「時間」を盗まれて人間らしさを失った人たちが、時間貯蓄銀行から「時間」を取り戻してゆく話だ。現代を生きる人たちにとって、本当の「時持ち」とは、単にたくさんの時間を持っているのではなく、「時間」の主体(オーナー)になり、幸せな「時感」を持った人のことだ。本当の「時持ち」こそ、いまを「幸せ」に生きる人ではないだろうか。

示唆に富む日野原重明さんの言葉
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高齢化が進む日本は、世界で最も長寿な国のひとつだ。一方、超高齢化社会では単身世帯が増加し、孤独死など高齢者の社会的孤立が深刻な問題となる、「おひとりさま」社会でもある。

「キリマンジャロの雪」(ロベール・ゲディギャン監督、アーネスト・ヘミングウェイの同名の小説とは関係がない)という2011年のフランス映画がある。港町マルセイユを舞台にした熟年夫婦の物語だ。夫は労働組合の委員長だが、会社のリストラにより多くの同僚とともに解雇される。そんなとき、子どもたちが、夫婦の結婚30周年記念にアフリカのキリマンジャロへの旅行券をプレゼントしてくれる。

しかし、ある日、強盗にその旅行券を預金とともに盗まれてしまう。やがて、犯人は夫と一緒に解雇された元同僚で、幼い2人の弟を養っている青年だったことがわかる。事実を知った夫は、怒り、戸惑い、苦しむが、身寄りのなくなった犯人の幼い弟たちに手を差し伸べずにはいられない。夫婦は手元に戻ったキリマンジャロへの旅行券も換金して、この2人を育てることを決断する。そのことで、夫婦は最後に幸せを感じるのだ。

この映画の幸せに満ちた夫婦を観て、人はどれほど優しくなれるのだろうかと思った。貧しくとも、お金を自分たちだけのために使うのではなく、困っている人がいれば分かち合う、そんな人と人とのつながりが、人間に幸せをもたらす。

現代社会は「競い合うこと」に目を奪われ、「分かち合うこと」を置き去りにしてないだろうか。「Into the Wild」という2007年のアメリカ映画でも、「幸福が現実となるのは、それを誰かと分かち合ったときだ」という名セリフがあったことを思い出す。

105歳で亡くなった聖路加国際病院の元理事長である日野原重明さんは、「自分のためにではなく、人のために生きようとするとき、人はもはや孤独ではない」と言った。これから本格的に訪れる「おひとりさま」社会には、孤独がついてまわるが、日野原さんの言葉は、とても示唆に富んでいるものだ。

映画「キリマンジャロの雪」を観て、あらためて、幸せは「分かち合う」ものであり、人と人とのつながりをつくることが、「幸せ」のライフマネジメントに他ならないと思った。

連載:人生100年時代のライフマネジメント
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文=土堤内昭雄

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