塩田氏:「起業家に最適化」の人生、すごくわかるなぁ。僕もプライベートの時間でも明日のパフォーマンスに影響しないか、とか考えながら過ごしてた頃もあるな。起業家タイプの人間って、「目標達成思考」なんだよね。自分の感情を優先するよりも、目標達成に最適化された生活をしないと気が済まない。
佐藤氏:多分、進学校志望の受験生に近い思考回路なんだよね。そもそも“3年で上場”という目標も吟味したわけじゃなくて、「スゴそうだからやってみる」で設定してた。だから、次なる目標が出てくれば頑張れると思ってたんだけど、目標を見失うと仕事に向かえなくなっちゃって…。それに、いままで自分の感情と向き合ったこともなかったから、「モヤモヤ」の対処法もわからなかった。
それまでずっと「目標達成思考」で突き進んできたし、「解決できない」なんてことは、あってはいけないと思っていた。だから、自分の「わからなさ」を受け入れられるようになるのに、半年近く時間がかかりましたね。
受け入れられるようになるまでは本当に混乱していて、経営者としてもブレブレでした。自分で目標を掲げているものの、メンバーにも「こいつ(佐藤)もこの目標を確信できてないじゃないか」っていうのがバレていたんだと思う。創業当時から関わってくれていたメンバーが続々と辞めていくのを、どうすることもできずにいて…。人生で一番「気持ち悪い」と感じながら生きていたかもしれません。
2014年、フリークアウトの上場記念式典で
人生を変えた「原宿のお粥屋」での出会い
塩田氏:そこから、どうして自分の「わからない」を受け入れられるようになったの?
佐藤氏:たまたま立ち寄った原宿のお粥屋さんで出会った「占い本」の一節が、価値観を変えるきっかけでした。なんとなく開いてみたら、自分の誕生日のページに「不可能を喜び、不可避を受け入れなさい」と書いてあって。その言葉を見て、ハッとしたんです。
自分が仕事に向き合えなかったのも、メンバーが辞めていったのも、すべてこの一文に集約されていると感じたんです。自分自身の「わからない」を許せないから、解決方法がわからずに焦っていたのだと。また、他者の悩みや不安に向き合うこともできず、メンバーがどんどん離れていくようになってしまったのだと。
そう思ってから、もっと自分の気持ちや不安を他者に吐露してもいいんじゃないかと思うようになり、マネジメントや他者との関わり方が大きく変化していったんです。
塩田氏:そのころのフェイスブックの投稿、いまでも覚えてるよ。「裕介くんがこんな投稿するの!?」ってびっくりしたもん(笑)。