「“魂”を進化させるとあなたはもっと輝く」
東証一部上場企業のCEOが上梓する書籍のメッセージとしては、異色と言ってもよいだろう。アカツキCEOの塩田元規氏の初めての書籍となる『ハートドリブン』には、論理や理性だらけのビジネスの世界で、情緒や感情を起点とする、新しい経営のあり方が提示されている。
不確実性の高い時代だからこそ、外側に目を向けて変化に流されるのではなく、自身の内側に目を向け、そこを進化させていくべきではないか──。
この価値観がきっと、次代の経営の新たな基準になる。そう思い、Forbes JAPANでは、塩田氏が「いま語り合いたい」と熱望した5名との連続対談を実施。第3弾は、旧知の友人。hey代表取締役にして、エンジェル投資家でもある佐藤裕介だ。
『ハートドリブン』を読むなかで、天才プログラマーとして名を馳せ、フリークアウトを3年半で上場に導いた20代を回顧したという佐藤。彼の目に、『ハートドリブン』はどう映ったのか。フランクなやりとりのなかに、起業家が向き合うべき「感情」のヒントが詰まった対談となった。【対談 第1弾 / 第2弾】
天才と呼ばれていた20代、佐藤裕介が人知れず抱えていた葛藤
佐藤裕介氏(以下、佐藤氏):出版されてから、すぐに『ハートドリブン』を読みました。塩田くんは古くからの友人なので書籍の趣旨は何となく想像できていたんだけど、実際に読んでみたら、僕が知らない過去の話も出てきて面白かったです。また、塩田くんが起業家として似た葛藤を抱えていることを知り、読み進めていく中で、自然と僕自身のキャリアも振り返っていましたね。
塩田元規氏(以下、塩田氏):これまでのキャリアというと、グーグルの社員だった頃や、heyを立ち上げる前のフリークアウトの頃の話だよね? あまり詳しく聞いたことないから、改めて色々知りたいな。
佐藤氏:僕の人生でターニングポイントになっているのが、フリークアウトが上場してすぐのころでした。ずっと「上場」を目標に突き進んできたから、上場を達成した瞬間に緊張の糸が切れてしまって。「このままこの会社を続けていいんだろうか」と、モヤモヤした感情を抱えるようになったんです。
会社を立ち上げてからは“起業家に最適化”された人生を歩んできたから、自分の感情や悩みは二の次で、真っ先に課題解決に取り組むスタンスで仕事をしてきました。だから、「目に見えない何かに囚われ、仕事に集中できない自分」に初めて直面し、混乱していたのだと思います。会社のメンバーには「上場はあくまでスタートだ!」なんて言うんだけど、自分が一番、目標に納得できてない。焦っていた当時の自分を思い出しました。