一方で、香港で「最も民意を反映する選挙」と言われる区議会選挙では、民主派が圧勝した。するとその3日後に、トランプ大統領は香港の人権と自治を擁護するための「香港人権・民主主義法案」に署名して成立させた。その腹心とは──。
ジェトロ・アジア経済研究所の久末亮一のインタビュー前編では、香港デモの長期化の3つの要因について分析した。後編では、鳥の目で見る、国際社会における香港情勢について、久末に訊いた。
「国際金融センター」としての役割を担ってきた香港は、今後どのような道を辿っていくのだろうか。
トランプ大統領が初めて訪中した2017年には、習近平国家主席から歓待を受けた(Photo by Thomas Peter-Pool/Getty Images)
米中対立の「外交カード」になった香港
私は、香港のことを世界と地域の経済システムに組み込まれた「エコノミック・ゲートウェイ」と呼んできました。香港を中心に、大小さまざま、多層的なレイヤーで、四方八方が結ばれ、経済の歯車が回っています。それこそが、香港の存在理由でした。
今までは、政治的な局面において、中国本土の影響力が強まったとしても、それだけを見て香港の情勢を判断することはできない、と主張してきました。
しかし、もはやマクロでの地政学的・国際関係的なパラダイムがシフトした現実を、私たちは理解しなければなりません。香港の存在は、米中間のパワーバランスの確執が構造化する中で、外交カードのひとつになってしまったのです。
トランプ大統領は、香港区議会選挙から3日後、「香港人権・民主主義法案」に署名して成立させた。これはトランプが香港のデモ隊にシンパシーを抱いているわけではなく、米議会下院を圧倒的多数で通過し、上院でも全会一致で議決された法案であったからです。
今後の運用に関しては、議会が主導権を握り、香港の高度な自治を認める「一国二制度」が機能しているかについて、アメリカ政府に検証を求めることになります。
この先についても、大きな観点や流れから見れば、緩急はあっても米中対立は避けがたく、エスカレートしていくでしょう。そこで香港は、今後も米中間の外交カードとなるでしょうし、それを公式化したのが今回の「香港人権・民主主義法案」です。