センサーで火災現場のリスクを算出 人命を守るAIが世界で続々

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火災から効率的に人的・物質的被害を防ぐため、さまざまなタイプの人工知能(AI)ソリューションが登場し始めている。

スペイン・バルセロナに拠点を構えるPrometeoは、火災現場で消防活動に従事する消防士の健康を守るというコンセプトで、AIソリューションを開発している。消防士の身体に設置されたスマートフォンサイズの端末を通じ、リアルタイムで火災現場の温度・湿度、煙の濃度などの情報を収集。AIが分析した結果を各色(緑・黄・赤)で表示し、危険状態を知らせるというものだ。

Prometeoは今年、IBMが主管する災害対策のためのイニシアティブ「Call for Code Global Challeng」で、優勝者にも選ばれている。というのも、欧州ではここ10年間、それ以前の平均より3倍近くも多い1600件以上の山火事が発生しており、鎮火活動にあたる消防士の健康状態に高い関心が集まっているからだ。

東南アジアに目を向けてみると、マレーシアでは昨今、パーム農園を火災などから守るドローン×AIの需要が高まっているとの報道もある。マレーシアとインドネシアのパーム農園の規模を合わせると86100平方マイルで、これは英国とほぼ同じ面積に該当するほど広大だという。人目が届かない場所の防災を、ドローンとAIによって効率化しようという動きである。

韓国では、火災発生時に地下鉄構内にいる人々を安全なルートで逃がすため、AIを使った「避難経路案内システム」が開発されている。12月上旬には、地方都市・大田の地下鉄駅で、韓国機械研究院が開発したシステムを使った避難訓練が行われた。

同システムのAIは、駅構内に設置された30個以上のIoTセンサーから集めた、温度、一酸化炭素、煙の濃度、また事前に消防士がコンサルティングしたデータを学習し、安全な避難経路を割り出す。

実際に火災が起こった際には、駅構内に設置されたモニターや、天井から照射されるレーザーポイント光線の指示印で、避難者を導くように設計されている。レーザーポイント光線とAIを連動させている理由は、火災時に駅構内の明かりの多くが消灯するリスクを想定しているためだ。

日本では、大規模石油コンビナートの火災などに対応するため、消防庁と民間企業と消防ロボットシステムを開発。2020年から千葉県市原市に実証配備されると報じられている。

発生の予測、避難・消火の効率化などあらゆる火災の局面で、今後も人工知能が活躍してくことになるはずだ。

連載:AI通信「こんなとこにも人工知能」
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文=河 鐘基

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