横断歩道を渡ろうとしている対象をカメラで認識し信号の表示を自動で変更するシステムだが、ディープラーニングを使用した認識技術の活用が話題となった。
また数年前から、英国のベンチャー企業「アンブレリウム(Umbrellium)」も、双方向横断歩道「スターリング・クロッシング」を開発してきた。AIが道路状況を自律的に判断して、時間帯や混雑具合によって「動的」に横断歩道を出現・消滅させるという近未来的なシステムだ。カメラで撮影した写真を解析し、横断歩道をスマート化するという点ではグラーツ大学のシステムと似たような技術が使われている。
韓国の地方都市・慶尚北道亀尾市でも、12月上旬にAIを使った横断歩道が実際に設置された。導入されたシステムは、横断歩道に近づいてきた歩行者をAIが察知。同時に周辺の車両通行状況を分析し、安全に渡れるかどうかを総合的に判断し信号を変化させる。
世界各国で開発や実用化が進むAI横断歩道システムは、決まった周期で信号が変わる既存のシステムに比べ、歩行者の待ち時間を節約できるというメリットがある。実際、横断歩道のなかには、交通量が少ないため信号設置の判断に迷うような場合もあろう。
その結果、無信号となってしまい危険な事故が起きるケースも想定しうる。しかし、待ち時間を自動調整してくれるAIシステムがあれば、検討の時間を省くことができ、安全性にも寄与することができるはずだ。
横断歩道で信号が変わるのを待つ時間は、個々人の人生においてどのくらいの割合を占めるか? もしくは、社会全体的にどれほどの量の機会損失を生んでいるか?
こうした研究は、探した限りでは見つけられなかった。しかし、想像してみただけでも、かなりの機会損失やロスを生んでいることは間違いない。現在、世界の各都市ではスマートシティ構想および建設が進められているが、「人の移動時間と社会的メリット」というテーマを設定した際、AI横断歩道システムに関する議論は欠かせないもののようにも思える。
一方、AIが信号の切り替えを担うとして、仮に事故が起きた際に誰が責任を負うのかという問題も浮上してくるはずだ。システム自体が事故の要因となったと仮定した場合、おそらくメーカーが製造者責任を問われるなどのケースが想定できるが、さらにディープラーニングなど「ブラックボックス化」してしまう技術が使われるとなると、誤判断の理由も明らかにできなくなってしまう可能性がある。
ともあれ、時間を大切に扱ってくれる横断歩道は生活に密着しているだけに人々のニーズが高いはず。安全性を確保できるソリューションや、法律の整備に期待したい。
連載:AI通信「こんなとこにも人工知能」
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