経済・社会

2019.12.13 12:30

川崎市ヘイトスピーチ禁止条例、刑事罰はなぜ「国外出身者」に絞られるのか

川崎市議会で全国初の刑事罰付きのヘイトスピーチ禁止条例が成立した

川崎市議会で全国初の刑事罰付きのヘイトスピーチ禁止条例が成立した

「差別」を禁止する対策として一歩踏み込んだ、川崎市に注目が集まっている。

ヘイトスピーチなど差別的な言動を禁止するため、全国で初めて刑事罰を盛り込んだ条例案が12月12日、川崎市議会で可決、成立した。市の勧告や命令に従わず、差別的な言動を3度繰り返した場合、最大50万円の罰金を科すことになると、Forbes JAPANの速報で伝えた。

ただ、刑事罰が下されるのは、日本以外の国や地域の出身者への差別が対象であり、川崎市が行ったパブリックコメントでは、「日本人に対するヘイトスピーチはなぜ含まれないのか」と、疑問の声が多く寄せられた。

12日午前10時に開会した川崎市議会の12月定例会。議場には多くの報道陣と傍聴者が集まり、その「歴史的瞬間」を見守った。市は全会一致を目指していたが、採決する際には議員2人が退席し、残る57人全員が起立し、賛成した。条例は成立し、2020年7月1日から全面施行される。

川崎市ヘイトスピーチ禁止条例が可決された川崎市議会
この後、57人の議員が起立し、ヘイトスピーチ禁止条例案が可決した。

公権力の濫用防止と表現の自由にも配慮

条例の正式名称は「川崎市差別のない人権尊重のまちづくり条例」。川崎市内の公共の場所において、日本以外の国や地域の出身者に対する不当な差別的言動を禁じている。

また公の場のヘイトスピーチだけでなく、近年問題になっているインターネット上の人権侵害についても、「市内の国外出身者に対する不当な差別的な言動」があった場合は、拡散防止の措置や公表に踏み切ることも記した。

具体的には、違反行為に対して、1回目は「勧告」、2回目は「命令」、さらに命令に従わなかった場合は、氏名などを公表し、50万円以下の罰金に処する。法人の場合は、行為者だけでなく法人も罰することになる。

「勧告・命令」のいずれも、有効期間は6カ月間に限定し、公権力の濫用防止に繋げることにした。今後、市は「差別防止対策等審査会」(構成員は5人)を設置し、表現の自由に配慮し、違反行為かどうかについて、慎重に判断する。

そもそもヘイトスピーチとは

ヘイトスピーチとは、そもそも何を示すのだろうか。

一般的には「憎悪に基づく発言」の一形態を意味する。法務省によると、ヘイトスピーチ解消法においては、特定の国の出身者であることや、その子孫であることのみを理由に、日本社会から追い出そうとするなどの一方的な内容の言動を示すという。

川崎市の条例では、「不当な差別的言動」として、以下の3つの類型を示した。

・本邦外出身者が住む地域から退去させることを扇動し、又は告知するもの

・本邦外出身者の生命、身体、自由、名誉または財産に危害を加えることを扇動し、又は告知するもの

・本邦外出身者を人以外のものに例えるなど、著しく侮辱するもの

公益財団法人「人権教育啓発推進センター」の報告書においても、ヘイトスピーチは同様に3つの類型に分けられ、「〇〇人は日本から出て行け」「〇〇人を皆殺しにしろ」「ゴキブリ〇〇人」といった例が挙げられる。
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文・写真=督あかり

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