BLACKPINKが放つ「ガールクラッシュ」の魅力。なぜ4人の女性に世界が注目するのか?


「女性の自立」を歌ってきたアーティストは、歴史の中にもたくさんいる。たとえば、音楽史に残るガールズグループの1組であり、昨年のコーチェラ・フェスティバルでの再結成も大きな話題となったDestiny’s Childは、19年前に発表した“Independent Women”で、異性に頼るのではなく精神的にも経済力的にも自立した強い女性を歌い、世界中から支持を得て大ヒットを生んだ。

そういった脈々と続く女性の権利運動にリスペクトを向けながらも、BLACKPINKは今、「女性の自立」「女性の強さ」をアップデートして表現しているように思う。

“DDU-DU DDU-DU”のあと、2曲目“FOREVER YOUNG”では情熱的な恋を歌い、3曲目“STAY”ではハイチェアに座りながら<どうしても君じゃなきゃダメなの そばにいて…Stay with me>としっとりと歌う。“Don’t Know What To Do”では恋人と別れたあとの孤独や困惑を露わにする。そしてMCのパートでは、メンバー同士で戯れ合って無防備な表情も見せる。

それらの一方で、“Kill This Love”で自分を傷つける恋を自ら殺して終わらせる姿を表し、“SEE U LATER”では浮気した恋人に対して<見る目がないの? あたしだけを見て 愛すべきだったね>と歌い、「自分を大切にしてくれない人からは、自ら離れていく」という態度を見せる。

BLACKPINK東京公演

BLACKPINKは、「誰も頼らずにひとりで生きていく」という強さではなく、ときには誰かに頼ったり甘えたりしながらも、「自分の“好き”は、自分で選ぶ」という形の自立心を表現しているように思う。「強くいたい」「でも、甘えたい」というのは、女性の心理の真理だろう。

BLACKPINKが表す「強さ」は、「強がる」だとか、あまり褒め言葉では言われない「気が強い」などではなく、自分の人生を自分で選択する意志と行動力の強さなのだ。その意志と行動力の強さは、BLACKPINKの「可愛さだけではなく、才能・スキルもある」という部分の根底にあるものだとも言える。

BLACKPINK東京公演

約2時間のステージを輝かせていたのは、そのダンサブルなトラックであり、The Band Sixの演奏であり、何発も吹き出る火の演出でもあるが、やはり一番中心にあるのは4人の圧倒的なプロ意識だった。

自分がやるべきことを理解して、そこに対して自分を磨き続け、自分で自分を輝かせている、その姿勢。夢や妄想を描いたりロマンを語ったりして終わるのではなく、現実的に行動している、その様。でも、ただストイックなだけでなく、柔らかいところは柔らかい。それこそが、女性たちが、いや性別は関係なくすべての人たちが、憧れの眼差しを抱く要素だろう。

2010年代は、誰でも簡単に音楽を作ったり動画を作ったり写真を撮ったりして、すぐに世の中へと発表できる時代だった。無名の人が作った曲が、映像が、写真が、たった一夜の間に大きなバズを生み、新たな流行を生み出すこともあった。それは、プロとアマチュアの境目が曖昧になった時代、とも言える。

ただし、一瞬のバズで消えるのではなく数年にわたって人気や注目を得続けるためには、やはり訓練や知識の積み重ねから生まれる「スキル」が必要なことが証明されつつもある。表現活動に限らずどの職業においても、2020年代は、よりスキルの重要性が見直される社会が訪れるだろう。

BLACKPINK

自分で自分の人生を作っていくために、スキルを身につけ、自分を輝かせ続ける――そんな理想の生き方を、時代の半歩先の生き方を、BLACKPINKは体現している。この日のステージに立っていた4人は、本当に眩しかった。

「BLACKPINK 2019-2020 WORLD TOUR IN YOUR AREA」日本公演
2020年1月4日、5日 京セラドーム大阪
2020年2月22日 福岡ヤフオク! ドーム

文=矢島由佳子

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