ビジネス

2019.12.19 08:00

マスよりも「次なる一人」 アシックスが地道な発信にこだわる理由 


──一人の可能性を信じることに、重きを置かれているんですね。

正直、インフルエンサーに任せるほうが楽だとは思います(笑)。でも、人と人との心の繋がりって、そんなに簡単なものではない。だからこそ、根本に同じ想いを持つ人を増やしていくために、私たちの想いも発信し続けていくのです。

──甲田さんは、仕事に全力で、楽しみながら臨まれている印象です。ご家庭を持たれていると聞きましたが、オンとオフのバランスについて意識していることはありますか?

オンとオフはハッキリと分けていないですね。例えば、家族とはよくアウトドアを楽しむのですが、キャンプ場はとにかく夜が早い。そこで、タープの中でランプをつけて仕事をするのですが、これがめちゃくちゃ楽しいんです。

私は境目をハッキリさせることに逆にストレスを感じてしまうタイプなので、「全力で登山して、全力で遊ぶ」ようなスタイルを貫いています。

なにより、私が常にポジティブな状態を保つことができれば、家族とも良好なコミュニケーションが築けます。仕事をすることが、結果的にプライベートにも活きている感覚ですね。

──そのモチベーションの源泉はどこにあるのでしょうか?

大前提として、私はスポーツが大好きなんです。学生時代には、県大会や全国大会に出場するバスケットボール部に所属していました。365日練習漬けでとても大変でしたが、優勝できた時の喜びが、未だに身体に染み付いています。あの厳しい中で鍛え抜いた体力や精神力は、「この先なんだって乗り越えることができるんだ!」という自信に繋がりました。

そんな私の経験からも、スポーツは種目を問わず、心身ともに健康な人を増やすことに貢献できるものだと信じています。スポーツの魅力を「勝敗」だけに留めることは、決してできません。



──スポーツといえば、来年は東京2020オリンピック・パラリンピック競技大会があります。2020年に、甲田さんは何を期待されますか?

スポーツを観て、聴いて、感動することを通じて、自分自身のエネルギーへと変換される体験が各所で生まれることですね。そして、それをきっかけにスポーツを始める人、とくにそういう子どもたちが増えることを期待しています。

近年は部活動の加入率の低下など、「子供がスポーツをしなくなってきている」という調査結果が出ています。だからこそ、私たちがインフラ整備にどれだけ貢献できるかが求められていると感じます。その際、「やらせる」ではなく「やりたい」気持ちをどれだけ創造できるかにこだわりたいです。

同時に日本のスポーツメーカーとして、2020をきっかけに湧き上がったモチベーションを継続させるための取り組みに、今後はさらに注力していきます。
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監修=谷本有香 インタビュー=三宅紘一郎 校正=山花新菜 撮影=藤井さおり

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