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2019.12.09 08:00

いまや揺籃の地、豪クイーンズランド州のスタートアップ支援


クイーンズランド州には、スタートアップ支援以外にも、イノベーティブな事例がいくつかある。例えば大企業との取り組みでは、グーグルのWingがドローンによる配達サービスのテスティングを行なっていたり、ジョンソン・エンド・ジョンソンがライフサイエンス系のスタートアップに州と共同投資をしている。



また、クイーンズランド州立大学やクイーンズランド工科大学などの技術移転機関(TLO:Techonlogy Licencing Organization)が、研究の成果として、実際にテクノロジーを利用して、商品化や知財を海外の企業に売るなどの出口(Exit)を意識した研究に取り組んでいる。

東京大学の先端科学技術研究センターも、クイーンズランド工科大学と共同でCO2フリー水素の研究を行っており、これは、州の広い土地や日射量の多さ、整ったインフラなどを上手く活用している良い例と言えるだろう。

10月に虎ノ門で開催されたInnovation Leaders Summitには、州の主要産業である鉱業、農業、建築の安全やコストの課題解決に貢献する「Universal Field Robots」、鉱物や天然ガスを輸出する主要港湾を支えるインフラ点検ロボットをつくる「Artemis」、マイニング産業やインフラ工事の現場でVR/ARにより工事現場スタッフのトレーニングの時間・費用を短縮する「Real Serious Games」、世界的なブランドの検証・保持に貢献する「Cryptoloc Technology」などが来日していた。



日本企業も学ぶべき点が多い

クイーンズランド州にスタートアップが増えてきている理由には、やはり政府の手厚い支援が大きい。面積に対して人口が少なく、生産性の面からもイノベイティブな改革が必要であり、15年間にわたり州政府が積極的にイノベーションに関する政策を推進してきた成果が現れている。

それに加え、シドニーやメルボルンに比べて生活費が安いこと、クイーンズランド工科大学やクイーンズランド大学に世界クラスのIT関連コースがあり優秀な人材を輩出していること、活用できる土地や資源が豊かであることも、スタートアップにとって背中を後押しする要因となっている。

人口が少ないことは、互いに協力しようとする精神を強くし、エコシステムの形成のしやすさやイノベーションを歓迎するマインドを生むなど、スタートアップと精神面でも共通点が多いため、起業の地として選ばれる理由になっているだろう。

最近、日本でもオープンイノベーションの波が押し寄せているが、クイーンズランド州には、日本企業とコラボレーションすることで申請できる補助金等もあることから、多くのスタートアップが日本企業への興味を持っている。

シリコンバレーの真似ばかりではなく、少ない人口でいかに土地の特徴を活かすかを念頭に置いたこの州のイノベーションへの取り組み方は、日本の企業も学ぶべき点が多いのではないだろうか。この機会に、互いに良さを活かし合う良いパートナーシップを結べるとよいと願っている。

連載:イノベーション・エコシステムの内側
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文=森若幸次郎 / John Kojiro Moriwaka

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