ビジネス

2019.12.05 16:30

北欧の雄エリクソンを動かす「イノベーション別働隊」とは


Ericsson Oneへの訪問を受けて、近年着目されている「PDCAサイクルからOODAループへ」というプロジェクト・デザイン・プロセスに関するトピックが頭に浮かんだ。

適切に運用されるPDCAサイクルはもちろん有用なものだが、私たちがえてして陥ってしまいがちなのは、PDCAの最初の「P」に膨大な手間と時間をかけてしまい、結果としてサイクルをしっかり回せなくなってしまうことではないだろうか。

Planの時点で、社内でさまざまな懸念点が挙げられ、それらへの対応で発案者は疲弊し、開発のスピード感は失われ、アイデアの鮮度も損なわれてしまうといったケースは、決して少なくないはずだ。

Ericsson Oneがチャレンジしているのは、社会について洞察することもさることながら、とにかくDoを重視することだ。まずは社会を観て、発見し、素早く決定し、動くというループをどんどんと回していく。

これはPDCAサイクルというよりも、米空軍のジョン・ボイド大佐が提唱したとされ、航空戦に臨むパイロットの意思決定をもとにしたスピード感のあるプロセスと言われる「OODAループ」(OODA=Observe:観察、Orient:状況判断、Decide:意思決定、Act:行動)を感じさせる動き方だと感じた。

日本でも海外でも、組織が大きくなればなるほど、また伝統を持てば持つほど、アイデアにチャレンジするスピードが鈍化するように思う。たとえ良いアイデアがあっても、スピードが損なわれることで具現化が難しくなる。すると、具現化したら生まれていたかもしれない気づきや新たなアイデアをとり逃してしまう……。

そうした構造に挑むための、小さくてフットワークの軽い「社会でラピッド・プロトタイピングを持つ別働隊を持つ」「OODAループを実践する仕組みを持つ」という視点には、学べることが多いのではないだろうか。



本記事の執筆担当者 >>小島一浩(こじま かずひろ)
産業技術総合研究所 人間拡張研究センター 共創場デザイン研究チーム チーム長。内閣官房情報セキュリティセンター センター員、知能システム研究部門 統合知能研究グループ所属主任研究員を経て現職。東日本大震災後、民間企業と産総研絆プロジェクトを立ち上げ、インフラ自立型トレーラハウスに住みながら生活サービスの構築を行うアクションリサーチに従事。復興まちづくり組織(一社)気仙沼市住みよさ創造機構の設計・設立に関与するなど、社会システム研究に従事。専門は、システム工学。

連載:スウェーデンから学ぶ「共創イノベーション」の生み出し方
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文=小島一浩

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