自然米100%、天然水100%、純米100%、自然派酒母100%の“自然派”な酒は、フランスの一流ソムリエが審査する日本酒コンクール 「蔵マスターコンクール」でも、純米酒部門プラチナ賞に選ばれるほど。また、「日本の田んぼを守る酒蔵」として、自然栽培化にも取り組んでいる。農薬や化学肥料だけでなく、有機肥料さえも使わずに栽培する“自然米”づくりを実施、土そのものが持つ、 “地力”だけで稲を育てている。
そんな仁井田本家が、年2回開催する感謝祭には、毎回2000〜3000人ものお客さんが集まる。日本酒の試飲ブースに、お燗専門の「もっきりBAR」、酒蔵見学に加え、県内外からよりすぐりの生産者が集まるオーガニックマルシェやスイーツ、コーヒー、雑貨店ブースなど、1日中楽しむことができる。
なぜ、この酒蔵にこれほどまで多くの人が集まるのか。キーワードは「100年後」だった。仁井田本家18代目当主である仁井田穏彦に聞いた。
──「人生100年時代」と言われるようになりましたが、伝統ある酒蔵としては、これからの100年をどう捉えているのですか?
私の前に代々17人の人間がいて、300年間、酒造りをしてきました。そのバトンを受けた300年目の節目に東日本大震災が起こりました。当たり前のように続くと思っていた酒蔵が、原発の影響であっという間になくなるかもという危機を目の当たりにしたんです。
そこで、これまでの300年間を振り返りました。ずっと順風満帆だったわけでなく、飢饉や乱があって相当に厳しい時期もあった。最後の最後まで追い詰められたこともあったでしょう。そんな厳しい時期を過ごして、少しでも次の世代へ良いものを残そうと17人が300年間をつないできました。
「18代目があの困難をしのいだから、400年続いているんだ」と100年後に言われたら、頑張った甲斐もあります。