半数以上の男性が「生きづらさ」を感じている
ここからは、Lean In Tokyoによる今回の調査結果を見ていきたい。
まず、職場や学校、家庭などの場で、「男だから」というジェンダーバイアスやプレッシャーにより生きづらさを感じることはあるかという問いに対し、「頻繁に感じる」と答えた割合は17%、「たまに感じる」と答えた割合は34%。すなわち、アンケートに回答したうちの半数以上が、日常的に男性としての生きづらさを感じている。
男性は、どのような点に生きづらさを感じているのだろうか。
精神面、仕事、ワークライフバランス、家庭のうち、最も男性としての生きづらさを感じるのはどれか質問した結果、「精神面・性格面に関する男性像」と答えた割合が41%と最も高かった。「強い」「男らしい」「女性をリードする」といった世間の男性像から、「男はこうでなければならない」と考え、個人の振る舞いや態度に影響を及ぼしているようだ。
次いで多かったのは「仕事・キャリア」という答えで、男性は収入面でのプレッシャーなどから、自分らしいキャリアの形成に悩んでいることが伺える。
男性が生きづらさを感じるシーンとしては、「力仕事や危険な仕事は男の仕事という考え」、「デートで、男性がお金を多く負担したり女性をリードすべきという風潮」、「男性は定年までフルタイムで正社員で働くべきという考え」という答えが上位を占めた。
パートナーとの関係性や、家庭での役割分担、仕事観といったところに、生きづらさを感じているようだ。
さらに興味深いのは、パートナーとの理想的な家事・育児の分担についての調査結果だ。現実とのギャップが明らかになった。
世間や職場でのしがらみを気にせず自分らしい働き方が選択できるとしたら、パートナーとどのような役割分担が理想かという質問に対し、全体の55%と半数以上の男性が、「共働きで、育休の取得等も含め、家事・育児を男女が分担する」と答えた。
しかし、日本の育休取得率の実態を見てみると、女性が 82.2%、男性が 6.16%(厚生労働省「平成 30 年度雇用均等基本調査(速報版)」)。男女で取得率に大きな差があり、理想には程遠い。男性の育休取得率が低く、職場だけでなく社会的にも育休を取得しやすい環境づくりがなかなか進んでいないのが現状だ。
男性の声に耳を傾け、ジェンダー平等へ
今回の調査により、 男性の働き方や日常の振る舞いに関して、「生涯働き収入を得て、家族を支えていかなければならない」、「弱音を吐いてはいけない」といったジェンダーバイアスが浮き彫りになった。「男はこうでなければならない」というプレッシャーにさらされ、男性は自分のことを後回しにした仕事中心の生き方になりがちだ。
そんなジェンダーバイアスによって、男性の働き方、さらには生き方の選択肢が狭められている。そうした現状を克服するためには、「男だから」「女だから」といった固定観念をなくし、多様な働き方や個人を尊重する文化を醸成していく必要がある。
そういった男性の心と体の負担に目を向けケアの重要性を呼びかけながら、ジェンダー平等を実現していこうとするのが「国際男性デー」の取り組みなのだ。
男性の働き方や生き方の選択肢を広げることは、女性が活躍できる社会の実現へと繋がっていくはずだ。
「国際男性デー」を機に、男性の声に耳を傾け、ジェンダー平等の実現について考えてみてはいかがだろうか。