投資の世界に絶対はない
このような詐欺に引っ掛かるのも一言で言ってしまえば「金融教育の欠如」がもたらした弊害なのだろう。少しでも投資の世界に足を踏み入れたことのある人であれば、「投資の世界に絶対はない」ということを知識ではなく体感として理解しているはずだ。
投資に絡む詐欺案件の多くが、「絶対に儲かる」というかたちで、将来のリターンを確約していたり、「絶対に損はしない」などと根拠なく元本保証をしている。しかし、投資というのはいまお金を投資し、将来そのお金がどうなるか、という行為であるため、不確実性の高い現代社会において、そのお金の将来を「絶対」という言葉を使って説明することは不可能なはずなのである。
そして、なにより「おいしい話」というのは基本的には世の中には出回らないものだ。仮にそのような話があったとしても、大学生の間で話が出回るようになったころには、すでにまったくおいしくない状況になっている。そういうおいしい話は一部の富裕層の間で共有されて一般的には世に出回らないのが世の常だ。
なぜ大学生が詐欺被害を受けるのか
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先程の図をもう一度見ていただきたい。29歳以下の相談件数が増えてきていることが分かるだろう。大学生が詐欺の被害を受けることが多くなってきているようだが、その理由は何だろうか。そこにはいくつか考えられる要因がある。
まずひとつは、大学入学を機に上京したり、親元を離れて一人暮らしをする学生が増えるからだ。これまでは何か怪しいと思うことがあったら親に相談できたかもしれないが、一人暮らしをしてしまうと身近な相談相手は友人や先輩になることが多いのだ。
しかし、今回は前述の通り、怪しい話を持ち掛けてくるのが友人や先輩のため、誰かに確認することもなく話を聞くことになるケースが多い。
次に考えられるのは、大学生になるとクレジットカードをつくったり、借りようと思えばお金を借りられるようになることだ。大学生の多くがアルバイトでお金を稼いだり、ブログやSNSを運用して収入を得たりするが、
そこにクレジットカードやローンで瞬間的に資産にレバレッジをかけられるようになるため、高校生までの時と比べると多額の購買行動も自分一人の判断でできるようになってしまう。高校生であれば50万円もするUSBメモリを買うという判断はなかなかできないだろう。