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2019.11.13 17:00

セーヌ川に沈んだ「動くコルビュジエ」 日本人建築家が見出した可能性

アジール・フロッタンのために遠藤氏がデザインした工事用シェルターのイメージ(Endo Shuhei Architect Institute)


しかしこの船は、本当にトラブルが多い。
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プロジェクトが再開してから、2018年にはまた新たな問題が発生しました。セーヌ川が増水した際に、船が岸に乗り上げてしまい、川に戻そうと引っ張った時に船体に穴が開いてしまった。そこから浸水したことでアジール・フロッタンはセーヌ河の底へと沈んでしまったのです。

船の状態を調査するにあたり、セーヌ川に潜水する必要があった。しかし、潜水するにも煩雑な手続きがあり、申請書を市役所に提出してから潜水するまでには3カ月かかりました。

老朽化の進んだ船の修復に加え、沈んだ船を引き上げる資金まで必要になったのですが、2019年から、前川國男が坂倉準三、吉村順三とともに設立した「国際文化会館」の助成金を得て、プロジェクトが再開しました。
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トラブルも多いのですが、何かあるたびに多くの人に救われる、運に恵まれている船なのです。

(c)スターリン・エルメンドルフ
2017年当時のアジール・フロッタンの内観 (c)スターリン・エルメンドルフ

アジール・フロッタンのこれから

元々何の関係もなかった、資金も潤沢にはないプロジェクトに関わり続ける理由を聞かれたら、冗談のようですが「一度乗りかかった船の出航を見届けたい」と答えています。

一つ課題を解決したらまた新たな課題が生まれ、本当に手のかかるプロジェクトに関わってしまったとも思いますが、見て見ぬふりはできない性格なもので。

アジール・フロッタンが歩んできた道のりのように、これからも計画通りに進まないことは多くあると思いますが、2021年の一般公開を目指してプロジェクトを進めています。

コルビュジエが構想した船の設計をそのまま生かし、コルビュジエの作品や情報を見せるレセプションルーム、初期の状態を見せるために復元させるオリジナルのベッドルーム、そして、現代の建築家やアーティストの作品展示室、この3つの空間で構成される船として生まれ変わる予定です。

アジール・フロッタンは、パリの中心地にあり、先日火災のあったノートルダム大聖堂は、目と鼻の先の位置にあります。

ノートルダム大聖堂も、再びパリの顔として復活するまでには時間がかかるでしょう。しかしいつか、アジール・フロッタンがノートルダム大聖堂のように、パリ市民からも世界中から集まる観光客からも親しまれるような存在になることを確信しています。

この船の長い歴史の中で、私が少しでも関わっていることは、偶然のような運命だと今では思っています。

建築家・遠藤秀平
えんどう・しゅうへい◎1960年生まれ、滋賀県出身。神戸大学大学院教授。アンドレア・パラディオ国際建築賞、第7回ヴェネツィアビエンナーレサードミレニアムコンペ金獅子賞、日本建築家協会賞、公共建築賞など受賞歴多数。

文=守屋美佳

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