テクノロジー

2019.11.14 06:30

目視不可能なナンバープレートをAIで解析 「犯罪の証明」への応用に期待

StockPhotosLV / Shutterstock.com

StockPhotosLV / Shutterstock.com

囲碁や法律文書の分析など、過去にさまざまな形で人間と人工知能(AI)の対決が行われてきた韓国で、また新たな“能力比べ”が行われることになった。

今回の対決のテーマとなったのは、「車のナンバープレート識別」。状態が悪く、ほとんど目視で確認できないナンバープレートの画像データを、どちらが正確に復元・解析できるかを競うというものだ。

韓国省庁・科学技術情報通信部傘下の公共機関に指定されている韓国電子通信研究院(ETRI)は、車両番号復元AIソリューション「Number Plate Deep Resolution(NPDR)」を開発。リゾート地として有名な済州島で人間との対決を行った。対決に参加した人間は、公務員や学生、研究院など。

車両ナンバープレートのデータは、警察大学校の治安政策研究室が実際に監視カメラで撮影したもので、合計15問が出題された。結果、およそ100分間の対決では、ETRIのNPDRが100点満点中82点を記録。人間が既存の解析ツールを用いて弾き出した最高得点(61点)を21点も上回った。

現地メディアの報道によれば、NPDRは「人工知能モデル間で競争させる方式でつくられた」と説明されている。おそらく、「敵対的生成ネットワーク(GAN)」などデータを生成するAI技術が用いられていると推測される。

ETRIは今後、周囲が暗かったり、もしくはナンバープレート自体の変形、汚れに左右されることなく認識できるよう精度を補完しつつ、一般的なCCTV映像からでも検出・識別を自動化できるソフトウェアを開発して、広くユースケースを確立していきたいとしている。

「犯罪の証明」への応用に期待

なお、目視が難しいナンバープレートの画像を補正・認識しやすいようにするなど、犯罪捜査、録画監視、不正調査の際の精度を向上させる技術および調査方法は「画像解析フォレンジック」と呼ばれる。フォレンジックとは「鑑識」の意。

日本国内では、警察内部に専門部隊や訓練された人材、専門技術が蓄積されている一方で、民間企業が関連技術を提供しているケースもある。調べた限り、後者の場合、解析されたデータは主に裁判など法廷提出用として活用されるようだ。そのため、技術の範疇としては「リーガルテック」のひとつと考えることもできる。

日本の警察関係者によれば、「粗い画像データを補正して見やすくする専用ツールや画像を補正するノウハウはこれまでもあった」とのこと。ただし、「人工知能が使われている事例があるかは定かではない」という。

粗い画像データを識別する技術は、自動車関連の事件だけでなく、その他の多くの犯罪の証明にも応用が可能なはずだ。また人工知能を用いることで、時間やコストの削減も可能となるだろう。廉価で正確な画像解析フォレンジックサービス、もしくはリーガルテックの登場に期待したい。

連載:AI通信「こんなとこにも人工知能」
過去記事はこちら>>

文=河 鐘基

advertisement

ForbesBrandVoice

人気記事