ビジネス

2019.11.05

「後で対応しよう」が命取り──スタートアップ知財戦略のキーマンが語った、「知財思考」の重要性

大谷寛


bitFlyer Blockchain

ブロックチェーン技術に関する研究開発を行うbitFlyer Blockchain(以下、bitFlyer Blockchain)は、ブロックチェーン技術の有望なユースケースとして捉えられている文書の存在証明に関する技術を有している。現在、なんらかの文書がある日付に存在したことを証明するためには、公証人による確定日付を取得することが必要とされるが、このプロセスは取得者にとって手続上の負担となる場合がある。

bitFlyer Blockchainの技術を活用すれば、対象となる文書を入力すると、その文書のハッシュ値がブロックチェーン上に記録され、後に、ある文書が存在したことの証明を行いたい場合には、ブロックチェーンから読み出されるハッシュ値がその文書のハッシュ値と一致することを検証すれば良い。文書自体がブロックチェーン上に記録されることはなく、機密性を維持しつつ、存在証明の手続負担を低減させるものとして、実用化が期待されている(特許第6275302号)。

カケハシ

薬剤師をサポートするための服薬指導支援ツールを提供するカケハシ(以下、カケハシ)は、自社のビジネスモデルを支える独自の特許を保有している(特許第6381088号)。カケハシが提供するサービスは、薬剤師が患者に対して行う服薬の指導と薬歴の記入を同時に行うことを可能にすることで、薬剤師が患者一人一人と向き合う「リソース」を生み出すものとして注目されている。また、薬剤師の負荷を軽減する新たな業務フローを可能にするこの仕組みは、「ビジネスモデル特許」の活用事例という観点からも、高く評価されている。

シードフェーズでの商標登録がスタートアップの成長を滑らかにする

特許はこのように事業上の優位性を権利として確立する大きな意味をもつことがあるが、大谷氏がこれまで幅広い分野でスタートアップを支援してきた中で、スタートアップからの相談のタイミングで、すでにプロダクト名が他社の先行商標と衝突している事例が少なくないという。

「PMF(プロダクト・マーケット・フィット)後のプロダクト名の露出増加にともない、悪意のある第三者に横取りされる形で商標出願をされるケース、出願が遅れたことで他社により類似商標を出願されてしまったケースなど、いくつかのパターンが挙げられるものの、いずれもPMF確立までのプロセスにプロダクト名のネーミングに関する法的保護の視点を早期に取り入れることで防ぐことのできた問題だと言えます。取り組むタイミングが遅れれば、いつこのような状況になってもおかしくありません」

こうした問題を解決し、プロダクト名の法的保護を早期実現するために大谷が今回始めたのが、商標出願プラン「エンジェルラウンド」だ。
次ページ > 「エンジェルラウンド」

文=勝木健太 写真=小田駿一

ForbesBrandVoice

人気記事