ダ・ヴィンチが手紙の中で記したのは、「建物ほどの高さがあり大型船も下を通れる石橋」で、全長366メートル以上に及ぶものだった。強風にも耐えられるよう両端には巨大な橋台が備えられていた。この橋は、地震の多いイスタンブールで強い揺れにも耐えるように設計されていた。
イスタンブールは、アナトリア・マイクロプレートとユーラシア・プレートの間にある断層の上に位置している。それぞれのプレートが動くとひずみが蓄積し、限界に達すると大きく動いて地震を引き起こす。
ダ・ヴィンチの橋の案は却下され、金角湾に橋が架かったのは19世紀に入ってからだった。しかし、仮にこの橋が実現していたら、当時としては世界最長であり、単一の石積みアーチの橋としては現在でも世界最長のものになっていた。
そして、ダ・ヴィンチの死から500年が経過した今、マサチューセッツ工科大学の研究チームが、この橋が建設可能だったことを実証した。橋の500分の1のモデルと2つの稼働プラットフォームを使い、実際に地震が起きた場合の動きを再現したところ、126の石で支えられたこの橋の安定性が証明された。
ダ・ヴィンチが手紙を送った54年後に、現在はイスタンブールと呼ばれるコンスタンティノープルを強い地震が襲った。多くの建物が倒壊し、1万3000人が命を落としたと推定されている。
ダ・ヴィンチが設計した橋が現代になり、実際に建設された例もある。2001年には、ノルウェーのオスロ近郊にダ・ヴィンチの設計を基にした全長109メートルの橋が建設されていた。