討論会では政府による、巨大テクノロジー企業の規制が議題となったが、そこで注目を集めたのが、スタートアップ起業家でシリコンバレーからの支持も高いアンドリュー・ヤンの発言だ。ヤンは、テクノロジー業界では、一部の企業による独占を防げないと述べた。
その一例として彼が挙げたのがマイクロソフトのBingだった。「現状では誰も検索エンジンのBingを使っていない。マイクロソフトには悪いが、これは事実だ」とヤンは話した。
ヤンの指摘は決して間違いではない。StatCounterのデータによると、世界の検索トラフィックの92.96%をグーグルが占めており、2位のBingのシェアはわずか2.34%でしかない。米国ではBingのシェアはわずかに上で、6.07%に達しているものの、グーグルとの差はあまりにも大きい。
さらにモバイルでの検索に限ると、グーグルのシェアは94.26%だが、Bingのシェアはさらに低い1.71%となっている。モバイルではヤフーのシェアがBingを上回り、プライバシーを重視する新興の検索エンジン「DuckDuckGo」がBingに迫る勢いで伸びている。
しかし、Bingが驚くほどの利益をマイクロソフトにもたらしていることも事実だ。Bingの検索広告は、年間約75億ドル(約8160億円)の売上を生み出している。この金額はグーグルの2018年の広告部門の売上、1160億ドルと比較するとごくわずかなものだが、非常にニッチな検索エンジンであるBingは驚くべきことに、ツイッター以上の売上を生み出している。
さらに、Bingの売上は、マイクロソフトの別部門のリンクトインや、Surfaceなどのハードウェア部門の売上も超えているのだ。マイクロソフトは今回のヤンの発言を、さほど深刻には捉えていないはずだ。
一方で、民主党の有力候補であるエリザベス・ウォーレンやヤンらは、彼らが政権を奪取した場合、大手テック企業らの独占的行為を規制しようとしている。しかし、来年の米大統領線で民主党が勝利するかどうかは別として、今回のヤンの発言によって討論会に、奇妙な一体感が生まれたのは事実といえる。