「人材の獲得」が買収の狙いか
Iandolaのリンクトインを見ると、テスラにおける新たな肩書は「シニアスタッフ 機械学習サイエンティスト」と記載されている。このことから、筆者はテスラの買収目的がAcqui-hire(アクハイヤー、買収による人材の獲得)だったと推測する。
CNBCによると、テスラでは自動運転技術チームのエンジニア12名がこの数ヶ月間で退職している。今後はDeepScaleのエンジニアチームが重要な役割を果たすことも考えられる。
自動運転向け知覚の専門家で、Princeton Lightwaveの元プレジデントであるSabbir Rangwalaは、今回の買収について次のように述べている。「テスラは、自動運転車向けAIの開発に必要な優秀な人材を多く獲得した。Forrestはカリフォルニア大学バークレー校で“効率的AI”に関する優れた研究成果を挙げ、DeepScaleで実用化を図った。テスラは、ロボタクシーの開発に野心的に取り組んおり、Forrestらは大いに貢献するだろう」
Rangwalaはまた、テスラによるDeepScaleの買収はAIマイクロプロセッサへの投資や、約50万台のテスラ車から取得したデータの解析でもシナジーを発揮すると指摘する。
一部の報道では、イーロン・マスクがロボタクシーの実現に向けてDeepScaleを買収したとの見方もあがっている。しかし、筆者の見解は異なる。
現在のテスラ車の自動運転は、SAEレベル2で、システムがスピード調整やブレーキ、ハンドル操作を支援するが、ドライバーは道路から目を離すことができない。テスラは、将来的に完全自動運転車を開発し、2020年までに自動運転によるライドシェアサービスを立ち上げると公言している。
レベル4に求められる知覚システムは個人向けであれ、ロボタクシー向けであれ、レベル2と変わらない。つまり、今回の買収は単純にAIベースの知覚を改善するという目的で実施したと考えるのが妥当だろう。