同社は、マスマーケット向け衝突回避システムで用いられているような消費電力の少ないプロセッサを使い、より精度の高い知覚システムを開発している。インテリジェントカーのエコシステムにおいて、これは重要なニッチ分野だと言える。
AEB(衝突被害軽減ブレーキ)の販売量は、車両に標準装備されるようになってから飛躍的に増えた。JATOのレポートによると、自動車販売台数に占めるAEBの標準装備比率は、2016年モデルイヤー(年式)が6%であったのに対し、2018年は39%、2019年は49%と急増している。
今回の買収を最初に報じたCNBCによると、DeepScaleのCEO、Forrest Iandolaが「テスラのオートパイロットチームに加入した」とツイートしたという。Iandolaは、カリフォルニア大学バークレー校で電気工学とコンピュータサイエンスの博士号を取得し、ディープニューラルネットワークの研究を行った。
AEBやアダプティブクルーズコントロールなどは、比較的リソースが少ないデバイスで動作し、現状はインテル傘下のモービルアイが市場を独占している。SAE(米国自動車技術協会)の自動化レベル3以上のシステムでは、リソースが少ないデバイスで必要な精度を実現するのは困難であり、エヌビディアの高性能SoC「Xavier」などが必要になってくる。
DeepScaleはニッチ領域に特化していることで、単独での事業運営に限界を感じていたのかもしれない。今回のディールについては、テスラもDeepScaleも発表をしておらず、買収価額の妥当性は現時点では不明だ。