家族にとって収入が減ったり途絶えたりするのは、まさに死活問題だ。世帯主が亡くなるリスクに備えるなら「生命保険」だが、病気やけがで働けなくなるリスクに備える場合は「就業不能保険」などが候補になる。とはいえ、「そんな保険、聞いたこともない」という人もいるのではないだろうか。
そこで今回は、働けなくなるリスクの現状と公的な保障を確認しながら、就業不能保険について紹介しよう。
30代会社員が「働けなくなるリスク」は「死亡リスク」の6倍超
マネープラン上の話で言えば、「死亡リスク」よりも「働けなくなるリスク」のほうが深刻だ。死亡の場合よりも、病気やけがで働けない状態の方が、医療費も生活費もかかるため、家計への経済的なダメージが大きくなる可能性が高いからだ。
さらに、データ上は、「死亡リスク」よりも「働けなくなるリスク」に直面する可能性のほうが圧倒的に高い。
会社員が加入する健康保険では、病気やけがで働けなくなって給与が支払われない場合などに、最長1年6カ月分、「傷病手当金」が受け取れる。傷病手当金は、「連続する3日間を含み4日以上仕事に就けなかった場合」といった所定の要件を満たした場合に、生活保障のために支払われる。その「傷病手当金」の受給件数と「死亡者数」を比べてみたのが図表1だ。
たとえば、30~34歳における人口10万人あたりの死亡者数は47人だが、健康保険の被保険者10万人あたりの傷病手当金受給件数は397件で、死亡者数のおよそ8.4倍だ。35~39歳では死亡者数は62人、傷病手当金受給件数は373件で、死亡者数の6倍を超える。
つまり、「働けなくなるリスク」はノーマークでいると危険度大。一般的に警戒しがちな「死亡リスク」よりも高い確率で起こり得るし、いざ起こったときのダメージが大きいため、働き盛りの世帯は特に、しっかり視野に入れておきたい。
自営業者に手薄い“働けなくなったときの公的保障”
ところで、それほどダメージが大きいのであれば、何らかの公的保障があるかどうか気になるところだろう。「死亡リスク」に対しては「遺族年金」があり、障害によって生活に支障が出てしまった場合には「障害年金」がある。
障害年金は、眼や耳、手足などの身体障害だけでなく、がんなどの病気で長期療養が必要な場合なども支給対象になる。ただ、障害年金は、病気やけがのために初めて病院を受診してから原則1年6ヶ月経過しないと請求することができないしくみになっている点は注意が必要だ。
病気やけがはすべてが障害になるわけではない。治療によって数カ月で完治するものは障害とは言えず、障害年金を請求することはできない。病気やけがが「障害」と判断される基準として1年6カ月の期間が設けられている。
さらに、判断された障害の程度が障害年金の受給に相当するかどうかの審査をパスして初めて受け取れる。つまり、障害年金は受け取れたとしても働けなくなってすぐに受け取れるわけではなく、また、請求すればだれもが受給できるものではないことは理解しておきたい。