学術誌「Art Therapy」に掲載された論文で、研究者らは塗り絵の効果を調べるために2つの実験を行った。被験者はそれぞれ約50人の大学生だった。
被験者には20分の間に読書か塗り絵を行ってもらった。半数が読書から始め、残りの半数が塗り絵から始めたが、最終的には全員が両方を行った。そして、被験者らにその時の気分や不安の程度、マインドフルネス、創造性を測る質問に答えてもらった。タイミングはタスクの前後、さらに読書と塗り絵の間の合計3回だ。
質問には他の類似した研究でも利用されたものが用いられたという。実験で得られたデータを、マインドフルネスを測定する指標「Mindful Attention Awareness Scale」で比較したところ、読書よりも塗り絵の方が不安を軽減し、マインドフルネスを向上させる効果が見られた。
実験結果は、塗り絵がセラピーの現場でも役立つ可能性を示すものとなった。例えば、大学のカウンセリングの窓口に塗り絵を常備しておき、不安を訴えた学生のセラピーに利用するなどの試みも有効だと研究チームは述べている。
では、塗り絵の図柄は関係するのだろうか。同じ図柄が繰り返される曼荼羅(マンダラ)にはリラックス効果があるとされるが、今回の研究では十分な裏づけがとれなかったという。ただし、「曼荼羅模様の塗り絵と、海中を泳ぐウミガメの塗り絵を比較した場合、ウミガメには不安を軽減する効果がなかった」と研究者は指摘している。
もしも不安を感じているなら、塗り絵を試してみるのもいいだろう。科学者たちもそのアイデアを支持しているのだ。ただし、ウミガメの図柄があまり効果的でないことは忘れないでおこう。