一方、近年のスマートシティは、ICT・データ利活用型となり、環境だけではなく「交通」「通信」「教育」「医療・健康」など、より横断的かつ多領域をカバーする。
そんな中、新技術や官民のデータを活用し、都市や地域の課題を解決する国交省の「スマートシティモデル事業」に、先行モデルプロジェクトとして採択されたのが茨城県つくば市を対象区域とする「つくばスマートシティ協議会」だ。
つくば駅から筑波大学に向かうバスの乗降時に顔認証でキャッシュレス決済することに加え、同大学付属病院の受付や診療費の会計処理なども統合する実証実験に取り組む。また、身体障害者や高齢者などが安全な移動ができるよう、電動車いすで横断歩道を渡る際、信号機の情報を車椅子に伝え、危険が近づいたときはアラームを鳴らして知らせる技術や、歩道での電動車いすの自動運転など、多くの日本初の取り組みを進める計画としている。
そのつくば地域のスマートシティ化を茨城県や筑波大学とともに牽引するのが、つくば市市長の五十嵐立青氏だ。中国・大連で開かれた「サマーダボス2019」のスマートシティセッションに登壇した五十嵐市長に聞いた。
──世界各国のスマートシティをリードする方たちとのパネルに参加された。どんな印象を持ったか?
いずれの国も、データ保護やデータプライバシーなど、倫理面で悩んでいると感じた。そういった課題に取り組むためにも、各スマートシティ間の協力を促進するため、10月9日にローンチされる「G20 グローバル・スマートシティ・アライアンス」に期待している。
これはつくばで開催されたG20貿易・デジタル経済大臣会合において世界経済フォーラムの尽力によって言及されたことだが、このアライアンスにおいて市民が実際に住んでいる現場を持つ基礎自治体の役割は大きいと感じている。
──スマートシティ・アライアンスを進める上での課題は?
世界各国の都市同士がどこまで国家レベルの関係と折り合いをつけながらコミュニケーションを取れるかだと思う。米中対立は言うまでもなく、各国の政治的な動きが経済に影響を及ぼしている。そのような状況だからこそ私たちは都市レベルでの信頼関係をつくっていくことに価値があると考えている。
たとえば、つくば市はMITやハーバードを有し、スタートアップ拠点としても世界トップの米国ケンブリッジ市や、特区として世界的な企業を生み出し社会実装を進めている中国の深セン市と姉妹都市・友好都市協定を結んでおり、近く両市長と会う予定もある。
ナイーブに響くことは十分理解しているが、クローズドなシティ・アライアンスの中で、互いの経験をシェアできるような関係性ができればいいと思っているし、それがつくばの果たしうる役割の一つだと考える。