その中で、誰でもが楽しめそうな「冒険川下りVR ラピッドリバー」という、激流の川を下るアクティビティを試してみた。
まるでボートのような台の座席に4人が並んで、ゴークル(HMD)を被って映像を見ながら手にパドルの棒を持って、激流を協力しながら漕いでいく。映像は非常に鮮明で、流れに合わせて座席が上下に揺れたり左右に回転したりして、CG映像だと分かっているのに実際に川下りをしているように体が反応し、水しぶきがふりかかったように錯覚し、転覆しそうになると思わず大声をあげてしまいそうな迫力だ。
「冒険川下りVR ラピッドリバー」(バンダイナムコアミューズメント提供)
「演劇から映画やテレビまで、これまでのエンタメは人間の共感によって感情移入する能力を利用していただけだが、VRは実感のエンタメ」と、小山さんはさらにVRに取り組む意義を強調する。VRを使うことによって、これまでのアニメやゲームを外から他人事のように眺めるのではなく、自分の視点から実感し体験へと読み替えるアクティビティに変え、経験をパッケージした新しいエンタメを開発していこうと意気込む。
確かにVRはエンタメ以外でも、工事現場の図面を見て危ないと注意されるのではなく自分で怖い思いをして身体が理解したり、サービス提供者の目線ではなく顧客からサービスを見たらどう感じるのかを学んだりと、理屈を超えた経験を伝えるためにトレーニングやプラニングなどの分野でも使われている。
VRは最近起きたトレンドのように言われ、ここ数年「VR元年」という言葉も使われているが、実は30年前から商用化が始まっている。
しかし当時は、HMDにしても画素数の少ない動きもぎごちないレベルのものが百万円単位で、CG専用コンピューターは億円単位のものも必要となったため、大学の研究室やテーマパークなどでは使われたが、一般人には縁遠いものだった。一方で当時すでに、現在のようなゲームへの応用や、図面から完成した建物の中を歩き回るデモや、宇宙や分子のミクロな世界を体験する研究がなされていた。
しかしなぜ、VRのような変わった研究がされたのだろうか? もともとはCGのルーツと関係がある。