芯の奥深いところで自分と向き合う。空手家・清水希容の戦い方 #30UNDER30

空手家 清水希容

鋭く射抜くような目つき。周りの空気までを張り詰めたものに変えてしまうような息遣い。どの一瞬を切り取っても絵になる力強く素早い動き──。

2020年の東京五輪から新種目に加わった空手の形(かた)で、メダルに近い場所にいるのが清水希容選手だ。

全日本空手道選手権大会では、2013年から6連覇を果たし、世界空手道選手権大会でも2連覇、世界最高峰のワールドゲームズ2017では金メダルに輝いた。

Forbes JAPANでは、そんな清水希容選手を「世界を変える30歳未満の30人」を表彰する30 UNDER 30 JAPAN 2019 「DOU(道)部門」のひとりとして選出した。

「『心技体』全てが一致した完璧な演武を目指して、日々取り組んでいます」と語る彼女の強さはどこにあるのか。



芯の奥深いところで自分と向き合う

空手は琉球王朝時代の沖縄を発祥とする武道だ。2020年東京オリンピックの新種目には、空手の「組手」と「形(かた)」の2競技が加えられた。

「組手」とは、1対1の対戦形式で、突き、蹴り、打ちの技を互いに繰り出してポイント制で勝敗を競うもの。一方の「形」は、仮想の敵に対する攻防の技を組み合わせた演武で、技の正確性や力強さ、美しさを競うものだ。

形には多くの種類があるが、技の順番や構成はあらかじめ決められている。選手が自分で独自の形を創造することはできない。そのため、評価の基準は、技の意味や狙いを理解し、正確に表現できるかどうか。スピードやキレ、迫力などがポイントとなる。

清水の得意技は、「チャタンヤラ・クーシャンクー」。彼女の流派「糸東(しとう)流」の技の中でも最高難度といわれるものだ。

「私の強みは、スピードや力強さです。形の中で勢いや思い切りの良さが昔からあるとも言われてきました。なので、それにプラスして理にかなった動きが正確にできるような稽古をいまは取り入れてやっています」

清水がそんな空手の「形」を始めたのは小学校3年生のとき。兄についていった道場で、演武をする女子の先輩たちの姿に魅了されたのがきっかけだった。

以来、鍛錬を続け、技を磨き続けた。中学生になると、学校が終わってすぐに道場へ通う日々を続け、全国大会を意識するように。純粋に空手が大好きだった少女は、多くのライバルたちの存在を知り、勝ち負けにこだわる強豪選手へと成長した。
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文=松崎美和子 写真=NurPhoto(Getty Images)

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